親が働いていなくても子どもを保育所に預けられる「こども誰でも通園制度」。
来年度から本格的にスタートする国の子育て支援策です。
現在は一部の自治体が先行して行っているが、利用者の反応は?
そして保育所の本音は?

■去年7月から大阪市が試験的に実施 「こども誰でも通園制度」
大阪市住之江区に住む貴田さん親子。
去年7月から大阪市が試験的に実施している「こども誰でも通園制度」を利用している。
母・貴田幸子さん:子どもが4人いて、自分の時間が本当にないのでちょっとでも自分の時間確保したい。同年代の子とかもっと小さい子と関わっておもちゃの取り合いから譲るとか、貸すとか学んでほしい。
専業主婦の貴田さんには、子どもが4人。
末っ子の大洋くん:これがきいろ。

■”イヤイヤ期”真っ盛りの末っ子・大洋くん スーパーにたどり着くだけでも一苦労
平日はいつも末っ子の大洋くん(2)と一緒。
”イヤイヤ期”真っ盛り、公園遊びを1時間で切り上げて買い物に行きたい貴田さんだが…
母・幸子さん:大洋、お買い物行こか。
大洋くん(2):いやいや…よるになったら、よる。
母・幸子さん:夜やったら晩ごはんの買い物できへんやろ。
大洋くん(2):いやや~。
まだ遊び足りない大洋くん。
母・幸子さん:こっちやで、大洋!
スーパーにたどり着くだけでも一苦労。
母・幸子さん:一つください。きょうと明日の分くらいしか買ってないですね。牛乳とかも4、5本くらいまとめて買いたいところなんですけど…。
落ち着いて買い物ができる日はほとんどない。

■親が働いていなくても保育所などに預けられる「こども誰でも通園制度」
そんな中で始まったのが「こども誰でも通園制度」。
この制度は、岸田前首相が打ち出した「異次元の少子化対策」に盛り込まれたもの。
親が働いていなくても、生後6カ月から3歳未満の子どもを、保育所などに預けることができる。
利用料は1時間300円、1カ月に10時間まで。
子どもが家族以外の人と関わる機会を増やすことや、親が、ほっと一息ついて孤独な子育てに陥らないようにすることが目的だ。
1人の時間があるだけでどれだけ違うのか?
大洋君を預けている貴重な2時間半に密着させてもらった。
母・貴田幸子さん:楽しんどいてな。

■「この時間が貴重な買い出しの時間」 預けている間に買い出しへ
この日は、大洋くん含め4人が制度を利用。お母さんと離れて、泣いてしまう子もいる中、大洋くんは…
先生:どこ行ったかな~。
お友達と元気いっぱい遊んでいる!
一方、貴田さんが向かった先は、業務用のスーパー。
大洋君がいる時とは違い、カゴ2つ分、あふれるほどの商品をレジへ。
母・貴田幸子さん:こんな感じです、いつも子供がいないときは。この時間が貴重な買い出しの時間。
およそ4日分の食料を買うことができた。

■同年代の友達との交流が貴重な成長の機会に
その頃、大洋くんは…元気にすごしていましたが、遊具をひとりじめしてしまうことも…。
先生:大洋くん聞いて!順番でのぼり合いしないと。
大洋くん:無理。大洋乗ってるから。
でも、ちゃんと仲直りもできていた。
大洋くん:ありがとう。
先生:大洋くんは、初め来たときは遊びたいものも『大洋が遊ぶ』って感じやったけど、『一緒にあそぼ』って遊んだりもできるように。みんな短い時間の中でも成長があったりだとか楽しみに来てくれたりする。
末っ子の大洋くんにとって、同年代の友達との交流が貴重な成長の機会となっているようだ。

■園側の負担は…「収支でいうと持ち出し」
あっという間に2時間半が終わり、お母さんたちがお迎えにやってきた。
母・幸子さん:(買ったものを)分けて冷凍してきました。山盛りの洗濯物をドラマ見ながら畳んで。一瞬で終わりましたこの2時間半は。
「こども誰でも通園制度」で貴重な「1人の時間」が生まれたようだ。
しかし、園側は、引き続き制度に参加するのか悩んでいた。
住の江幼稚園 市田守男理事長:現状、収支でいうと持ち出しです。

■「どこの園も恒常的に人手不足。かなりしんどいんじゃないか」
国や自治体から園に対して支払われる委託料は原則、こども1人に対して1時間あたり850円。保護者のニーズ次第で、利用者数や利用時間が月ごとに変動するため、安定した収入が見込めまない。
仮に希望者が増えても保育士を追加で雇えるのか、経費や人手不足の面で大きな不安を抱えていた。
そして今年度、園は事業者として手をあげず子どもの受け入れも停止している。
住の江幼稚園 市田守男理事長:どこの園も恒常的に人手不足の時に、その人員を割いて事業をするのはかなりしんどいんじゃないかなと。大きいのは人件費ですので、少なくともそれを確保できなければ運営としてはやっていけないという判断。
国は、来年度からの本格実施を掲げているが、園に負担を強いる制度のままで、本当に子育て支援策といえるのか。
(関西テレビ「newsランナー」2025年6月3日放送)
