ついに政府の備蓄米が市場に放出された。長引くコメ価格の高騰に喘ぐ庶民にとって“恵みのコメ”となるか――。ネット販売では予約が殺到し、早くも激しい“コメ争奪戦”の様相を呈している。

ネット販売は過熱…あっという間に「完売」の文字
「焦って買わなくても選択肢は増える。市場には間違いなく動きが出る」。小泉農水相が自信を見せる今回の備蓄米放出。その言葉を裏付けるかのように、ネット販売での争奪戦は早くも熱を帯びている。

生活用品大手「アイリスオーヤマ」では、2022年産の備蓄米(5キロ税込み2160円)のネット販売を29日午後1時に開始した。記者もアクセスを試みるが、サイトにつながりにくい状態が続き、わずか50分後には画面に「本日の予約受付分は完売」の表示が。アイリスオーヤマ幹部は「新米の時期になれば在庫を残してはいけないという小売り各社の思いも出てくるので、一石を投じるような今回の備蓄米の放出になったのではないか」と語る。

一方、楽天グループも29日午後から5キロ税込み2138円でネット販売を開始。こちらは当初スムーズにサイトへアクセスできたものの、購入を試みるとなかなか次のページに進まない。その後、なんとか予約画面にたどりついたが、配達日を指定しあと一歩で予約完了というところで「一時的なシステムエラーでお買い物できません」との表示が…。こちらも約2時間で完売となった。

店頭販売はいつ?価格は? 消費者の期待とスーパーの戦略
ネットでの争奪戦を横目に、多くの消費者が気になるのは「いつ、いくらで店頭に並ぶのか」という点だ。
備蓄米5000トンの販売を予定するのが大手ホームセンター「カインズ」。担当者は「現時点では税込み価格で2160円を目指して検討している」と明かす。高値が続く米売り場でこの価格を聞いた客からは、「安くなるのはうれしい」「家族も食べるから安い方がいい」と切実な声が聞かれた。

さらにカインズでは、日持ちする玄米を「30キロ袋」で販売することも検討中。客は「そこにコイン精米所があるから玄米でもかまわない」「夫婦2人なら少しくらい古くても」と話し、消費者のニーズも多様化しているようだ。カインズの担当者は「コメの高騰は消費者の暮らしを圧迫している。より安く多くの方に提供できる手段があるならぜひ活用したい」と話す。

一方、福岡市に本社を置くディスカウントストア「ミスターマックス」は、6月上旬をめどに店頭販売を開始予定で、価格は税抜きで5キロ1000円台を目指すという。

また、「ドン・キホーテ」も6月2日の週には店頭に並ぶ見込みで、5キロ2000円台での販売を検討しているという。

街のお米屋さんの“期待と不安”
大手スーパーの動きが注目される一方、小泉農水相は「第二弾」として、中小スーパーや街の米穀店向けの売り渡しも受付開始する。
福岡県宇美町の「いしぬき米穀店」も随意契約の申し込みに意欲を見せるが、石貫徹也代表は「まだ本当に不透明で…」と、詳細が不明な点に不安を隠せない。
最大の懸念は、取引の対象となる2021年産の備蓄米「古古古米」の品質だ。「水分が少なくなっているので固く炊き上がったり、敏感な方は臭いが気になることもあります」。しかし、価格重視の顧客ニーズは確実に高まっており、同店では規格外の米(10キロ6300円)が「2日ほどで40袋売り切れる」ほどの人気だという。

石貫代表は、古い米でも「冷たい水で炊いたり、日本酒やはちみつを入れたりするとツヤや粘りが出る」と、おいしく食べる工夫を教えてくれた。取材中にも備蓄米に関する問い合わせの電話が鳴り、消費者の関心の高さがうかがえる。

日本人の食卓に欠かせないコメ。今回の政府による備蓄米放出は、長引く価格高騰に終止符を打ち、家計を助ける一筋の光明となるのか。それとも、一時の熱狂に終わるのか。今後の動向から目が離せない。
(テレビ西日本)
