長野県中野市で4人が殺害された事件から5月25日で2年。4人の殺人の疑いなどで青木政憲被告(33)が逮捕・起訴されている。専門家によると、この事件は「ローンオフェンダー」の特徴がみられる。「ローンオフェンダー」は組織に属さずにテロ行為に及ぶことを指す。長野駅前の3人死傷事件、東大駅前の切りつけ事件など同じような事件は後を絶たない。専門家は「社会的な孤立を防ぐ」ことが重要だと指摘する。
個人でテロ行為「ローンオフェンダー」
日本大学危機管理学部の福田充教授は青木被告の犯行は組織に属さず個人でテロ行為に及ぶ「ローンオフェンダー」の特徴があると指摘する。「かなり誇大妄想的な、被害妄想的な状況に追い込まれていたと推測ができると思う。ローンオフェンダーに近いと思います」と話した。

独りぼっちを意味する「ぼっち」という言葉に過剰に反応し、事件当時、近所付き合いがほとんどなかったという青木被告。現在も、担当弁護士に事件の話を全くしていないという。

福田教授は「自分の人生を諦めたような状態、社会に関しても自分自身についても無関心である状態が強化されているという意味では、自暴自棄型の犯罪に近い傾向がある思う」と分析した。
近年「自暴自棄型」が増加
福田教授は「ローンオフェンダー」を大きく3つに分類している。
安倍元総理銃撃事件のように政治的思想が動機になる「テロリズム型」。
2016年に神奈川県の障害者施設で入所者19人が殺害された事件は、差別的思想を持つ「ヘイトクライム型」。

そして、中野市の事件のように個人的感情から他者を巻き込む「自暴自棄型」。
近年、増加しているのがこの「自暴自棄型」だ。

2025年1月、JR長野駅前で男女3人が死傷した事件。5月、東京メトロ・南北線の東大前駅で起きた殺人未遂事件。いずれも逮捕された男は被害者と面識はなく、経済的に困窮していたとみられ、福田教授は「自暴自棄型」の特徴があるとしている。
「孤立する人を生まない社会を」
福田教授は「社会的に孤立して、仕事や家族関係がうまく成立していない状態に陥っている個人、そういう個人が(事件を)引き起こしていることは多いかと思う。個人を社会から孤立させない、それを家庭とか、地域とか職場、その中でどうやって孤立させずに見守るか、一人一人が考えていく必要があると思う」とし、社会的な孤立を防ぐことが重要だと指摘した。
(長野放送)