日本食に欠かせない香辛料の一つ「山椒」。宮崎県北部の山沿いを山椒の産地にしようと、大手食品メーカーと高千穂町のしいたけ生産者などが協力して新たなプロジェクトが始まった。しいたけ農家が山椒を栽培する利点とは?
「ぶどう山椒」の新たな産地へ
農林水産省の2022年の統計によると、山椒の生産量は和歌山県が1位で、2位が高知県、宮崎県は…出荷量が少なく、統計自体がない。

山椒は、独特のしびれとさわやかな香りが特徴で、ウナギの蒲焼をはじめ日本食に欠かせない香辛料の一つだ。

ぶどうの房のように実る黄緑の粒「ぶどう山椒」。

この山椒の新たな産地を作ろうと、大手食品メーカー・ハウス食品グループ本社などがプロジェクトを立ち上げ、3年前から日之影町などで試験栽培を行っている。

ハウス食品グループ本社調達戦略部 小坂修部長:
順調に成長している印象。日本の代表的な産地の仲間入りをされて、山椒のブランド化が図れ、地域の活性化につながればいいと考えている。
「しいたけ」と「山椒」の“相乗効果”

山椒栽培の担い手として白羽の矢が立ったのは、原木乾しいたけの生産者たちだ。乾しいたけは収穫時期が春と秋で、ぶどう山椒の収穫時期となる夏は閑散期。新たな収入源の確保につなげようと、しいたけの集荷・販売を行う高千穂町の「杉本商店」が、地元の生産者に参加を呼びかけてきた。
杉本商店 田崎文章課長:
山椒を栽培することによって収入が増えて、その資金がしいたけ栽培にもつながっていく。産地としても守られることにつながると考える。
試験栽培に参加する障害者就労支援施設・フラワーパークのぞみ工房 池田尚弘さん:
年間を通して、いろんな作業があって、またそれが利用者の工賃につながっていく。サイクルに入ってくれたらいいと思う。
杉本商店によると、乾しいたけの乾燥機を山椒の乾燥にも活用できる見込みで、初期投資が抑えられることもメリットだそう。生産者の高齢化や天候不良などにより生産量が減少する中、しいたけと山椒を一緒に栽培することで相乗効果を生み出すと期待している。

試験栽培には現在、高千穂町や日之影町など北部山沿いの6つの町と村と熊本県の2つの町のあわせておよそ50戸が参加。山椒に詳しい南九州大学の前田隆昭教授から栽培の候補地や植え方などについて助言を受けながら、ようやくこの夏に初めて収穫できる見込みとなった。

南九州大学 環境園芸学部 前田隆昭教授:
もともと山椒は山間地で栽培されているもので、宮崎県の山間地は栽培に適した土地だと考えられる。山椒の栽培も今後、拡大していけるのではないかと考えている。
今後は、栽培方法や乾燥方法を検証しながら毎年1000本山椒の苗木を植えて、2年後から本格的に販売することを目指している。
(テレビ宮崎)