食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。

植野さんが紹介するのは「オムライス」。東京・東銀座にあるレストラン「ア・ヴォートル・サンテ・エンドー」を訪れ、南魚沼産コシヒカリと鳥取大山鶏を使った濃厚チキンライスをふわとろの卵で包み込んだ逸品を紹介。

多くの常連客を虜にし、「日本一美しい」との呼び声が高い店の看板メニューの秘密に迫る。

東銀座は個性と美味のグラデーション

東京都中央区の東銀座駅にある「ア・ヴォートル・サンテ・エンドー」。

植野さんは「銀座はもちろん素晴らしい店がたくさんありますが、築地へ行くにしたがって、個性的な美味しい店が増えていきます。東銀座は“個性と美味のグラデーションエリア”と僕は呼んでいます」と話す。

銀座エリアの東側に位置し、東京駅まで8分の東銀座。駅直結の歌舞伎座を中心に「日本文化×食×エンタメのまち」として独自の魅力を放っている。

元3つ星ホテル料理人の料理が味わえる

東銀座駅から徒歩1分。大通りから一歩脇道を入ったビルの2階にあるのが、1989年開店の「ア・ヴォートル・サンテ・エンドー」。

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大きな窓から明るい光が差し込む温かみのある空間で、都心の騒がしさから離れ、厳選した素材が織りなす洋食に舌鼓を打つ、大人の特等席だ。

オーナーシェフの遠藤克己さんと、妻・敦子さん、2人は開店以来、共に歩んできた。

高級フランス料理店や3つ星ホテルで修業した克己さんが独自の感性で作り上げる料理に、客も絶賛する。

「オムライスがフワフワでめちゃめちゃ美味しい」「名物のヒマラヤカレーが美味しい」「ビーフシチュー、お肉が柔らかでソースの味もちょうどいい」

東銀座で30年以上愛され続ける確かな味わいを求め、つい足が向いてしまうそんな店なのだ。

欧州を旅する料理人がデザート職人と

店名にある「ア・ヴォートル・サンテ」はフランス語で「あなたの健康に乾杯」という。

店名にした理由を聞くと克己さんは、「僕がアフリカに行っている時にアフリカの上司が酒を飲むたびに“ア・ヴォートル・サンテ”と言っていたので、これを店名にしようと思った」とのこと。

克己さんは1951年、新潟で生まれ、19歳で上京し、六本木の高級フランス料理店や3つ星ホテルのレストランで修業する。27歳の時に、貿易会社の派遣でウラン鉱脈を掘る隊員たちの食事を作る料理人としてアフリカに渡った。

その後もヨーロッパを旅して現地のレストランで働き、腕を磨いていった克己さん。日本に戻りデザートの勉強をするために勤めた店で運命の出会いがあった。

「もともと甘いものが好きでデザート専門店に勤めていた。そこでたまたまアフリカで仕事していたこの人が研修で“デザートも覚えたい”と店に来て知り合った」と妻・敦子さんは出会いを振り返る。

その後、克己さんは1989年に敦子さんと結婚。2人で、「ア・ヴォートル・サンテ・エンドー」を開店した。

シェフ・克己さんは、フランスの修業時代にまかないで食べていたパスタやラタトゥイユなどをメニューに取り入れ、敦子さんは修業時代に学んだデザート作りなども担当。

東銀座の地で36年間、これからも2人の歩みは続いていく。

本日のお目当ては、ア・ヴォートル・サンテ・エンドーの「オムライス」。 

一口食べた植野さんは「中のケチャップライスがすごく旨味が濃い」と感動していた。

ア・ヴォートル・サンテ・エンドー「オムライス」のレシピを紹介する。