愛媛県新居浜市に、平均年齢75歳のおばあちゃんたちが働く「ほっこり」カレー店がオープンした。「75歳以上」限定という異色の求人で話題を呼んだこの店は、高齢者の新たな活躍の場として注目を集めている。

「おばあちゃんパワー」全開のカレー店

愛媛県新居浜市西の土居町にある「酒井カリー」。このカレー店の従業員は、全員が70歳以上のおばあちゃんたちだ。

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最高齢は81歳、平均年齢は76歳という、まさに「人生経験豊富」なスタッフが腕を振るう。

代表の酒井知子さん
代表の酒井知子さん

店を運営するのは、新居浜市阿島で産業廃棄物のアップサイクルに取り組む酒井興産だ。その代表である酒井知子さん(49)は、「働きたくても働く場所がない高齢者のために、そういう場所を作ったらもっとみんなが輝くことができるんじゃないかな」と考え、この特徴あるカレー店をオープンさせた。

「75歳以上」という異色の求人に40人以上が応募

2024年8月、新居浜市内のフリーペーパーに掲載された「75歳以上」という条件の求人広告。この珍しい募集に、予想を上回る反響があった。

酒井代表は「約40人以上の希望者がいて、お問い合わせはもっとありました。かなりの方々がお仕事をしたいという意欲を持ってらっしゃるんだなと思いました。逆にちょっとびっくりっていう…」と、その反響の大きさに驚いたという。

採用された大野厚子さん
採用された大野厚子さん

採用された大野厚子さん(74)は「娘がたまたまここの求人見てあなたも働いたらと。私も20年前はこういう飲食業に就いていたからもしかしたらやれるかなと思って」と応募のいきさつを話す。

酒井カレーで働くのは、73歳から81歳のおばあちゃん6人。週に3日から4日、午前10時から午後4時までの間で、3人が4時間のシフト制で調理や食器洗い接客にあたる。

ここで働く尾崎さかえさん(75)は「もう年ですからこの仕事で一生終わらせていただきます」と笑顔で語る。

「ほっこりルール」で居心地の良い空間に

酒井カリーでは、おばあちゃんたちが生き生きと働けるよう、独自の「ほっこりルール」を設けている。

店内には「ばあちゃんタイムゆっくり真剣に作ります」、「注文を間違えたら違うよと言ってください」といったポップが掲示されている。

三好あや子さん(74)は「お客さまに私たちが(クレームを)言われたらドッキンとしますので、ゆっくりと答えたいし笑顔も出したいので、それでこういうのを作っています」と説明する。

この「ほっこりルール」は、お客さまからも好評だ。「めっちゃ笑いました」「話し方がほっこりしてるので、それも気持ちがほっこりして良い感じです」といった声が聞かれる。

スパイシーな味と温かな雰囲気が人気

開店から約2カ月、酒井カリーの評判は上々だ。

「カミカツ黒毛和牛カレー」卵黄入り(1050円)
「カミカツ黒毛和牛カレー」卵黄入り(1050円)

人気メニューの一つ、「カミカツ黒毛和牛カレー」卵黄入り(1050円)は、「最初一口目は甘いんですけど、後を追いかけるようにどんどんピリピリスパイスが効いてきます」と、そのバランスの良さが好評を博している。

スタッフの山口ひろみさん
スタッフの山口ひろみさん

スタッフの山口ひろみさん(81)は「とってもおいしいと言われるように、みんな心を込めて頑張っています」と、仕事への誇りを語る。

高齢化社会に新たな可能性を示す

おばあちゃんスタッフの働く姿は、みんないきいきとしていて、酒井代表は、この取り組みが他の高齢者にも勇気を与えられればと考えている。

「今高齢化社会ですから、その人たちに一部分でも勇気を与えられる、そんな感じだったらうれしいかなと思います」と、今後の展望を語った。

酒井カリーの挑戦は、高齢化が進む日本社会に新たな可能性を示している。おばあちゃんたちの笑顔と、スパイシーなカレーが織りなす温かな空間が、地域に活力を与え続けている。

(テレビ愛媛)

テレビ愛媛
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