セブン-イレブンが、自動走行ロボットによる配送実験を開始した。安全面にも配慮した設計で、人手不足や買い物困難地域の課題解決を目指す。専門家は、今後深刻化する人手不足や高齢化による配送の課題に対し、ロボットが有効な対策になると見ている。

自動配送ロボットの実証実験を東京・八王子市で開始

セブン-イレブンが配達事業の強化を目指し、自動運転のロボットによる配送テストを開始した。

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「ご注意ください。右に曲がります」
「セブン-イレブンの商品を配送中です」

セブン-イレブン・ジャパンが運営しているロボットが、可愛らしい声で道路を進む。
19日から、東京・八王子市の一部エリアでスタートしたのは、「自動走行ロボット」を使った実証実験だ。

国内の屋外ロボット配送では、配送エリアと対象個数で最大規模だ。

利用者が専用アプリで商品を注文すると、従業員はその商品をピックアップし、あとはロボットの荷台に積み込むだけで、ロボットにはエリアの地図がインプットされているため、自動で配達場所までの適切なルートを考え届ける。

「ご注意ください。発信します」

時速6キロメートルと、早歩きくらいのスピードで走行し、坂道も何のそので、どんどん進む。

もちろん迅速な配送だけではなく、安全面も考慮している。レーザーで距離を測定するセンサーや、9個のカメラで周りを確認しながら走行し、信号の検知も可能だ。

横断歩道を渡ることができるだけでなく、もし人が近づいても停止することができる。

商品はQRコードをかざしてシャッター開けると取り出すことができる
商品はQRコードをかざしてシャッター開けると取り出すことができる

取材班:
こちらにQRコードをかざすと、シャッターが開き、ここから商品を取り出します。

将来の配送危機に備えた持続可能な体制づくり

セブン-イレブンが目指すのは、人手不足など配送業界が抱える課題の解決だ。

高齢者が多く住むエリアや郊外などで利用すれば、買い物が困難な人たちへの助けになるという。

セブン-イレブン・ジャパン ラストワンマイル推進部・東原ひかるさん:
(自動走行ロボットは)都心部では労働人口が少ない時間帯で活躍できたり、地方部では今配送ができていないエリアで活躍できるような、配送困難が訪れたときに、そこが解決できる一助になる。配送手段をいろいろ検討することによって、将来的な配送というものが持続可能な形で続くようにしたい。

ロボットの活用で社会課題の解決を目指す実証実験は、2026年2月まで行う予定だ。

7NOW強化と人手不足に対応する配送ロボット戦略

「Live News α」では、データサイエンスの専門家である西内啓さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
今回の自動走行ロボットによる発送の取り組みには、どういった背景があるんでしょうか。

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
売上ベースのシェアが約50%、利益ベースでは60%以上と、コンビニストア市場では圧倒的な強さを見せるセブン-イレブンですが、次の成長のエンジンとして、この「ラストワンマイル事業」つまり、7NOWを中心として、コンビニと消費者の間の距離をどう埋めるかという取り組みを2021年から進めています。

今回のロボット活用は、その戦略を支えるこの省人化テクノロジーの柱の一つとして、実用化に向けた布石と言えるでしょう。

堤キャスター:
人手不足への対応が欠かせないわけですね。

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
7NOWは、一般的な宅配スーパーが倉庫から届けるという形とは少し異なり、物流網がリアル店舗のものを使っており、リアルタイムで配送するハイブリッド戦略で、最短30分で食料品や日常品を届ける革新的なサービスになっています。

ただ、今後サービス拡大にあたり、配送に関わる人手不足がかなり深刻な問題になることは当然予測されます。先手を打って、今回のようなロボティクスの実証実験というのを積極的に進めているんじゃないかなと思います。

7NOWのサービスは、買い物や移動が困難な人たちが多い地域ほど、ニーズが潜在的にはニーズが大きいと考えられます。一方、そうした地域の多くは、高齢化などにより、消費者の人数と比べて働き手がかなり少ないと限られているという課題を抱えています。

今回、実証実験が行われた南大沢のエリアも、そうした状況にある地域であり、今回の取り組みが上手くいけば、全国の郊外の住宅地などへのサービスをどんどん拡大できる可能性が見えてくると思います。

ロボティクスで広域展開を図るセブンの新たな転換点

堤キャスター:
西内さんは、このロボットの活用をどうご覧になっていますか。

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
今後、天候や地形の制約をどう克服するか、自治体や住民との調整をどこまで円滑に進められるかといった、テクノロジー以外の部分という課題はあります。

こうしたロボティクスを通じて、コンビニの外にある広範囲の消費者へ、商品やサービスを提供できるようになると、セブン-イレブンとしても大きなビジネスの転換期を迎えるのではないでしょうか。
(「Live News α」5月19日放送分より)