沿線自治体の足並みの乱れが指摘されていた北陸新幹線の敦賀以西ルート問題。石川県が建設促進大会の決議文に「米原ルート再検討の必要性」を盛り込むよう求めたことで波乱の展開になったが…その背景にあったのは、度重なる認可・着工の延期。“分裂”するかに思われた沿線自治体だが、延伸に向けての最大のハードルは“京都の課題解決”との認識を再確認することとなった。

石川が「米原ルート再検討」求める
東京都内で5月12日、北陸新幹線の沿線10都府県が集まって建設促進大会が開かれた。
石川県・馳浩知事:
「万が一、大きな前提が崩れた場合には、10年前に議論があった米原ルートも検討してほしい」
この発言で、会場には緊張が走った。なぜなら、これまで北陸新幹線建設促進大会は「小浜・京都ルート」を前提としてきたからだ。「京都府内の課題解決が困難な場合」という条件付きとはいえ、突如「米原ルート再検討の必要性」が持ち出された。
石川県は大会前から「米原ルートの再検討」を決議文に記載するよう事務局の福井県に求めていて、どのような決議文が示されるか注目されていた。

決議文には「米原」記載なし
結果、決議文には「米原ルート」の記載はされず、例年通り「小浜・京都ルートでの早期全線開業を求めること」のみが記された。
だが大会終了後、馳知事は「今回、石川県の提案によって同盟会の決議に3つの文言が盛り込まれた」と強調。実際、今回の決議文には、京都府などが示した課題解決に向けて、国が体制強化や住民に対する情報発信、丁寧な説明など最善を尽くすよう求める内容が初めて盛り込まれたのだ。
福井県の杉本達治知事は「京都を中心として様々な課題がある。沿線の住民の皆さんの理解を得るという言葉を入れること自体は、非常に重要だという認識で入れた」とした。

“京都の課題解決”が最大のハードル
敦賀ー新大阪間の認可・着工は、これまで3年連続で見送りとなっている。前提となる「着工5条件」のひとつ「地元自治体の同意」が得られなければ、この先も認可着工は見送られることになり、北陸新幹線が大阪に向け伸びることはない。
同盟会は“京都の課題解決”を小浜・京都ルートの認可・着工に向けての“最大のハードル”と位置付け、改めて国や関係機関に全力で取り組むよう求めた形だ。

「小浜・京都ルートでの早期全線開業」を求める決議が満場一致で採択されたとはいえ、今回、京都府の西脇知事や大阪府の吉村知事は大会に参加しなかった。つまり、沿線の総意が完全にまとまったとは言い切れない側面もある。
福井県の杉本達治知事は「このまま敦賀で止めるのか?ということを国会議員にも問いかけた。同盟会が一致団結しながら、大阪につなぐことを第一に考えながら進めていきたい」と理解を求めた。

馳知事「京都の理解を得るに尽きる」
石川県の馳知事も「京都の課題をしっかりと解決しなければ令和8年度も見送りとなる可能性はなきにしもあらずだ。国策として進めている以上は、政府として、京都府知事が示した7つの課題をどのように解決していくのか。より具体的に、また科学的に示してほしい。そして京都府民、京都市民のご理解を得てほしい。私はそのことに尽きると思っている」と地元同意に向けての国の責任に言及した。

認可・着工が見通せないことも背景に、ルート問題が再燃し“火消し”に追われた今回の大会。他方で、最大のハードルは地下水問題などを課題に挙げる“京都の理解”だと確認できた大会でもあった。

ルート問題に端を発した沿線の足並みの乱れは認可・着工を見送り続ける“国への不信感”や現状への“焦り”が背景にある。国は京都が示す課題解決に全力で取り組み、住民の理解を得られるのか。今がまさに国家プロジェクトを主導する国が、責任を果たすべき時でもある。さらには、国を動かすだけの熱意を沿線側から届ける取り組みも求められている。