日本では年間に1億3000万本もの傘が製造されていて、このうち6000万本から8000万本がビニール傘と推定されている。しかし、大半は廃棄されていると言われ、こうした傘は使い捨てるものという意識を変えようと、創業100年あまりの傘の老舗が奮闘している。

傘の老舗を継ぐ決断の裏に

2025年に創業から106年を迎えた静岡市葵区の傘専門店・藤田屋。

この記事の画像(7枚)

4代目の藤田大悟さんは業界の将来性への不安から大学を卒業後、自動車関連産業へと進んだが2024年10月、「家族で話した時に、私が継がなかったら会社が無くなってしまうということを肌で感じた」と家業を継ぐことを決めた。

この決断に喜びを隠せないのが傘職人でアンブレラマスターの資格を持つ母・仁子さんで「高校を卒業してから(家に)いなくなっていたので、本当に久しぶりで励みにもなるしうれしい」と頬を緩ませる。

創業以来守り続ける傘への思い

“傘で自分らしさを表現する”というコンセプトのもと染め物や挽き物、さらには着物などを再利用した商品を手がけている藤田屋。

静岡市内でのアンブレラスカイ(提供:藤田屋)
静岡市内でのアンブレラスカイ(提供:藤田屋)

これまで美術館をイメージした1枚張りの傘の製作や障害のある人が描いたデザインとのコラボ、頭上を色とりどりの傘で埋め尽くすアンブレラスカイの実施など様々な形で傘の魅力を発信してきた。

ただ、創業以来、最も大切にしてきたのが傘を大事にする心。

この日も「強風で折れてしまって…」と口にする客が来店するなど、藤田屋はどんな傘であっても修理の依頼を受け付けることで知られている。

後進を指導する酒井さん
後進を指導する酒井さん

70年以上にわたって傘の修理に力を注いできた大悟さんの大叔父・酒井清司さんはいま、長年培ってきた自らの技術を伝承すべく後進の指導にあたっている。

日本では年間に6000万本から8000万本のビニール傘が作られていると推定されているが大半は廃棄されていると言われ、酒井さんは「(ビニール傘が)台風一過にたくさん捨てられている様子を見るが、あれが一番悲しい」と嘆き「それぞれに合った傘を大事に使ってほしい」と話す。

傘の新たなスタイルを目指し

藤田屋で代々重んじてきた精神を胸に、大悟さんは「1つの傘を長く使い続け大切にしてほしいという思いと今のファッション性をアレンジさせながら、具体化していくことをやっていきたい」と傘の新たなスタイルを提案したいと意気込んでいる。

そんな大悟さんに先代で父の道一さんは「時代背景に合わせたモノづくり、お客様が必要とするものをどういう風に作っていけるかというようなところだと思うので、彼が考えていることがきちんと形になっていければ、まさに会社の向かっている方向性と同じかなと思います」と期待のまなざしを向ける。

藤田屋店内(静岡市内)
藤田屋店内(静岡市内)

どんな天気でも心晴れやかに外出できるように…藤田屋では次の100年に向かってきょうも傘と向き合っている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

静岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。