高橋英樹さんなど多くの著名人に愛された京都のお好み焼き店が、5月11日、65年の歴史に幕を下ろした。
夫婦二人三脚で作り上げた名店の、最後の1日を、取材した。

■1960年から続く多くの著名人にも愛された名店
京都市北区の閑静な住宅街にある、お好み焼き店「大徳寺喜代」。
(※「喜」の字は「七」が3つ)
接客を担当する、夫の井上章さんと、調理を担当する、妻の一美さん。夫婦二人三脚で、店を切り盛りしてきた。
店を開いたのは、1960年。

地元の人はもちろん、多くの著名人が訪れる店として知られ、なかでも俳優の高橋英樹さんは、50年以上、この店の味を愛し続けてきたという。
高橋英樹さんのブログより:やはり大徳寺喜代さんのお好み焼きは絶品!
大徳寺期喜代 井上一美さん(84):舞台俳優さんはオーバーにふりをしないとだめでしょ。なので、だいぶうちのお好み焼きにも…。
大徳寺期喜代 井上章さん(84):独特の家内の勘と、僕の勘で作り上げている。見た目は(普通の)お好み焼きやけど、食べたら全然違うから、プロができないっていう。
井上一美さん(84):ちょっと言いすぎ、褒めすぎ。

■「お金もらわんとこう」お人好しの妻・一美さん
もともと看護師をしていた一美さん。章さんとの出会いを機に、「巻き込まれる」形でこの仕事を始めたという。
井上一美さん:(最初は)『お店手伝わなくてもいいよ、勤めてもいいよ』ということだった。そうではなかったです。(エプロンが)用意されてました。もうめちゃくちゃ大変…。きょうだけ勤めて、あしたは帰らせてもらおうと思いました。
それでも章さんの情熱と、一美さんの愛嬌で、長く人気を集める店に。
井上章さん:(一美さんが)お人好しで、昔はお客さんが『おいしい』と言うと、『もう、お金もらわんとこうや』というぐらいお人好しでした。
(Q.章さんはどんな存在?)
井上一美さん:どっちかというと怖いかしら。

■「もうちょっと続けてほしかった」 常連客で溢れる最後の日
ことし2人は、85歳になる。体力の問題もあり、この日で、店を閉めることになった。
訪れた客:カレー焼きそばまでいきたい。
井上章さん:メニューにないけど作ります。
井上章さん:麺がおいしいんです。みんな美人ばかりで“面”がいいから。
店は、閉店の知らせを聞いた常連客で、あっという間にいっぱいに。
常連客:おいしいのはもちろんですし、ご夫婦の人柄でこれだけ長く、たくさんの方に愛されているんだなと。たくさんの方が花束を持ってこられているのを見て感じました。
常連客:相変わらずうまいよ~、そらうまいよ。体力にも限界があるということでしょ。もうちょっと続けてほしかったかなぁ。うまい!

■「ありがとうやね、ほんとに」 65年の歴史は多くの人の思い出となり残る
「ありがとう、おやすみなさい」
午後10時。ついに、最後のお客さんが、店をあとに。
そして…「大徳寺喜代」の最後の1日が終わった。
「ありがとうございました」「お世話になりました」
井上章さん:ようやったなって、よう頑張ったなって。
井上一美さん:自分で自分を褒めながら。
井上章さん:ほんまにありがとう。
井上一美さん:ありがとうやね、ほんとに。
決して平坦な道のりではなかった65年。その歴史は、多くの人の思い出となって残り続ける。
(関西テレビ「newsランナー」2025年5月12日放送)
