4月30日未明、京都市で水道管から大量の水が漏れ出し、道路が冠水しました。現場から、関西テレビ・田中友梨奈アナウンサーが中継で報告する。
田中友梨奈アナウンサー:京都市下京区の冠水が起きた現場です。京都駅から一駅の五条駅に近い場所で、着物を着た観光客も歩いている京都の街中です。現在、帰宅ラッシュの時間帯で、多くの車が走っていてます。

田中友梨奈アナウンサー:
警察に通報があってから14時間ほど経過しましたが、現在も復旧工事が行なわれていて、20人ほどの作業員が道路を掘り下げ、土を出し、新しい配管のようなものを運んできて、地中に埋めるといった作業が行われていました。
午後4時からは京都市の記者会見が行われ、市によると今回事故が起きた現場周辺では、すでに古い水道管を交換する工事が行われていたのですが、事故が起きた場所はこれからその工事が行われる予定だったということでした。
午後5時過ぎの現在の交通状況ですが、国道1号線は片側4車線あり、そのうち西に向かう4車線全て交通規制が行われています。反対側の1車線を利用して通行できるようにはなっていますが、渋滞が続いている状況です。

■国道1号線で未明に水があふれ出す
突然起きた京都市内の大規模な冠水事故の影響と原因を取材した。
4月30日午前3時半ごろ、京都市内の幹線道路で「道路に水があふれている」と通報があった。
午前9時半ごろ、現場上空からは、まだ水があふれ続けている様子が確認された。
ヘリリポート:割れた道路から大量の水があふれ出ています。
京都市水道局によると、水が漏れたのは66年前に敷設された上水道の水道管。
この水道管の耐用年数は60年程度だったということだが、老朽化により、亀裂が入った可能性があるということだ。
水があふれ出たのは、京阪・清水五条駅から西に400メートルほどの場所。交通量の多い国道1号線ということもあり、朝から車の渋滞が発生した。

■流れ出して1分たたないうちに道路が川のように
京都市の中心部を突如襲った大規模な冠水。取材を進めると漏れ出した水の勢いの強さがみえてきた。
水が噴き出した現場から60メートルほど離れた場所の防犯カメラの映像を見ると、30日午前3時半ごろに突然、水が押し寄せてきた。
道路は水が流れ始めてから1分もたたない間に、まるで川のような状態になった。そこから3時間たっても、水の勢いはおさまりまらなかった。
近隣住民:雨かなと思って、気が付いて外見たら、川のよう流れていた消防の方にすぐ電話した。このへん(ふくらはぎの真ん中)ぐらいまで(漬かった)。
朝方の思いもよらない冠水で、すぐに気づかなかった住民もいたようで、防犯カメラには消防隊員が住宅を回る様子も映っていた。
現場から100メートルほど離れた場所でも、駐車場に止めていた車が水没する被害が発生あった。
車が水に漬かった男性:外を見たらえらいことになっていると。(水が)車のボンネット下ぐらいまで。もう廃車やと思います。びっくりですね…。
昼前に水は引いたものの、住民は片付けに追われることとなった。

■周辺では水道水が濁る被害も
さらに周辺のスーパーでは、水道水が変色し濁った状態になった。
フレスコ五条店 小西浩生店長:(水道水が)少し濁ってますね。出勤した朝7時ぐらいにはもう濁っていた。
フレスコ五条店 小西浩生店長:普段(水道水は)食材を洗ったりに使っています。今はペットボトルの水で対応しています。一刻も早く復旧してほしい。
水道水が濁るなどの影響は、現場を中心に最大約600メートル離れた場所まで広がった。
正午ごろには、給水車6台が出動した。
給水に来た人:近くに93歳の1人暮らしのおじいちゃん、私の父がいますので、コーヒーとお味噌汁が欲しいと言いますので、その分だけ。
給水に来た人:給水されてたので、せっかくなのでいただいて帰ろうかな。(子供に)きれいな水飲ませたいなと。

■なぜ大規模冠水は起きたのか
「newsランナー」では、土木計画を専門とする神戸大学大学院・小池淳司教授と現場へ向かった。
神戸大学大学院 小池淳司教授:掘って、水道管を出して、亀裂部分を発見して付け替える作業をするんだと思います。
小池教授は、冠水が大規模になった背景には、道路の特徴があるのではと指摘した。
神戸大学大学院 小池淳司教授:あの道路は幹線道路なので、かなり太い管が入っていて、その影響で大きく水が出たと思う。
現場には、掘り出されたとみられる破損した水道管が置かれていた。
神戸大学大学院 小池淳司教授:裂けていますよね、完全に。
さらに、水が流れ込んだ住宅街へと向かうと、被害の範囲が広がった理由について指摘した。
(Q.広い範囲の被害 特有の原因は?)
神戸大学大学院 小池淳司教授:道路を見る限り(水が漏れた現場は)高い場所ですよね。だから広がったんだと思います。
神戸大学大学院 小池淳司教授:この辺りは川がないので、そこにも抜けないし、市街地というのもあるでしょう。京都市内なので明確な河川がないので、水がそのまま住宅街に流れて、いろんな所が浸水したということだと思います。

また警戒されるのが、大規模な「道路陥没」だ。
ことし1月に、埼玉県八潮市で起きた道路陥没では、穴が日を追うごとに拡大。
このケースでも、きっかけとなったのは「水道管の破損」で、破損箇所に土砂が流れたことで、巨大な空洞ができた。
国交省の職員が道路の空洞を調査したところ、今回は空洞があるような反応は今のところないということだった。
さらなる被害拡大の可能性はあるのか、さらに小池教授に話を聞いた。

■国道がふさがれ「市民生活の影響も大きい」
都市のインフラ計画が専門の神戸大学の小池淳司教授に、事故が起きた現場を見ながら、話を聞いた。
神戸大学大学院 小池淳司教授:京都の中心部で、しかも住宅地に近いところで、朝から浸水が起こった。国道1号線の車線が少なくなって、これによる市民生活の影響も大きいと思います。
埼玉県八潮市の道路の崩落事故が記憶に新しいところだが、今回の水道管破裂と原因は異なるのか?
神戸大学大学院 小池淳司教授:水道管の管自体が壊れた、あるいは破損したという意味では同じですが、(八潮市で原因になった)下水道管というのはいろんなものが流れて、化学反応によって腐食が場所によって起こりやすいところがあるんです。
神戸大学大学院 小池淳司教授:(京都市で原因となった)上水道管は割ときれいな水が流れていますの、そういう意味では原因は違う。それから八潮市の時は10メートルの大深度で、大口径の管が壊れて土砂が流れて、それによって地盤が陥没したというのが原因です。今回は深さ1メートルのところで30センチの管ですので、違いは明確にあると思います。

道路が崩落する可能性はあるだろうか?
神戸大学大学院 小池淳司教授:非常に浅い所ですし、先ほど発表があったように、ほぼ埋まっていて、この後空洞調査をするので、崩落の心配は比較的ないと思います。
現場では応急処置で一旦水が止まっている状況だが、再び水が漏れだす可能性はあるのだろうか?
神戸大学大学院 小池淳司教授:(水道管を)いま付け替えたところで起こることはないと思いますが、日本中いろんなところでこういった事故が起こる可能性はあると思います。
今回は京都の中心部だったが、関西の他の地域でも同様のことがいつ起きてもおかしくないようだ。
神戸大学大学院 小池淳司教授:そうだと思って間違いはないと思います。

■「新たな維持管理方法にするというのが大事」と小池教授
ジャーナリスト・鈴木哲夫さんからの「行政も含めてどうしたらいいのか」という質問に対し、小池教授は予算が削られてきた経緯を説明し「新たな維持管理方法」の必要性を指摘した。
ジャーナリスト 鈴木哲夫さん:東京などでも掘り返すと水道管が『こんなに腐食してんの』というぐらいになっていて、(水漏れ事故は)明日は我が街だと思っています。取り替えるのは大変な工事だと思いますが、行政も含めて、どうしていったらいいのでしょうか?
神戸大学大学院 小池淳司教授:短絡的に考えれば、水道料金を上げるとか、税金を上げるということなのでしょうけれども、80年代から起こってきたのは、インフラ整備や管理に関して予算をかなり削ってきたんです。
神戸大学大学院 小池淳司教授:かつ政治とインフラ整備あるいは土木事業というものを切り離してきたという経緯があって、もう一度国民的議論のもとに自治体とか事業者に任せるのではない、新たな維持管理方法にするというのが大事かと思っています。
神戸大学大学院 小池淳司教授:インフラ事業、ちゃんと管理しておくというのは、次の世代への投資ですので、皆さんがもっと一生懸命考えて、知恵を絞って効率的にやることも大事かと思います。
耐用年数を超えた水道管がいたる所にあり、公共事業費が十分なのか、もう一度見直す必要がありそうだ。
水道という地下のインフラのリスクは見えにくい中で、対策を考えることは喫緊の課題だといえる。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年4月30日放送)