働き方改革、ハラスメント対策…管理職になることで、意識を向けなければいけないことが増える。その一方で労働面や精神面でも負荷が増え、まるで「罰ゲーム」のように思えてしまう。

管理職が罰ゲーム化することに危機感を持ち、現状を分析して解決策を提案するパーソル総合研究所・小林祐児さんの著書『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(集英社インターナショナル)。

そこから近年の管理職が直面している「年上部下」問題について、一部抜粋・再編集して紹介する。

悩ます「年上部下」マネジメント

近年の管理職の頭を悩ませる大問題が「年上部下」問題です。

組織の平均年齢が上がり、ポストオフ後も長く働くようになってきたことで、「年齢は上司よりも上だけれども部下」という50代、60代が増えました。

「元管理職の、年上のベテラン」をマネジメントする可能性がかつてよりも、ずっと高くなったのです。これは「たかが年齢」で済む話ではありません。

この「年齢逆転」が、どういった意味を持つのか、丁寧に読み解いていきましょう。

バブル崩壊後の人事管理の潮流を一言でまとめれば、「脱・年功」です。

年功序列の傾向は希薄に(画像:イメージ)
年功序列の傾向は希薄に(画像:イメージ)
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年功的に上昇してきた賃金はフラットになってきましたし、等級・グレード(格付け)ごとの標準年齢も撤廃されてきました。近年ブームとなった「ジョブ型雇用」の狙いの一つにも、年功的な賃金上昇を防ぐことがあります。

このように、「年を重ねるごとに高い処遇になる」といういわゆる「年功序列」の傾向は希薄になってきました。

しかし、この脱・年功の流れと、組織における「年齢」の重要性が減じることは、イコールではありません。

日本企業に今起こっているのは、いわば「年功型から年輪型へ」の変化です。年輪型とは、「何年入社か」「今、何歳か」という人に刻み込まれた「年」という過去の属性が、組織内秩序において重要な要素であることを示す筆者の造語です。

「年輪」と「年功」のギャップ

日本は、高等教育において飛び級も留年も少なく、若年失業率も先進国の中でかなり低い国です。高卒であれば18歳、大卒であれば22歳か23歳で就職する割合が高くなります。

こうした社会においては、入社直後に年上である24~25歳の会社員は、新入社員にとって「先輩」です。日本社会は、この年輪のように細かなコミュニケーションの前提が、まるでタトゥーのように刻み込まれ、残り続けます。