連休初日の4月26日、多くの人でにぎわう茨城県の大洗サンビーチで、“ハマグリを密漁した”として、3人が摘発された。
海上保安庁と警察などによる取り締まり。大洗サンビーチでは、潮干狩りが出来る場所や使用できる道具、とっていいハマグリの大きさなどが細かく決められている。
今回は、規定の大きさを超える道具を利用したとして、県海面漁業調整規則違反の疑いでの摘発だった。
楽しいはずの時間が一転、摘発とは…。
「実は潮干狩りは、気付かないうちに違法行為をしている場合が少なくないのです」
こう話すのは、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士。違法行為とはどういうことか、詳しく聞いた。
アサリやシジミでも『密漁』に…『漁業権』に注意
【牧野和夫弁護士】
日本のほとんどの沿岸部には『漁業権』が設定されています。漁業権とは「一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利」で、漁業権者以外の人が、漁業権の対象となっている『水産動植物』をとることを制限する権利です。
密漁となる対象の『水産動植物』は、アワビや伊勢エビといった高級食材だけではありません。アサリやシジミといった貝類、ワカメなどの海藻類など日常で食卓に出てくるものも多く含まれています。
漁業権とは?知っておくべき基本知識
漁業権は大きく分けて3種類ある。
*定置漁業権:一定の場所で定置網を営む権利
*区画漁業権:一定の場所で真珠養殖や藻類養殖、魚類小割式養殖などを行える権利
*共同漁業権:地元漁民が一定の水面で共同して漁業をする権利
このうち、潮干狩りに関係するのは『共同漁業権』で、海岸線に沿った沿岸域のほとんどに設定されています。
つまり、一般の人が、共同漁業権の設定された沿岸部で、アサリやシジミなどの対象水産動植物を無断でとると、『漁業権の侵害』となり『密漁』となってしまうのです。

具体的には、アサリやシジミなどの密漁は「100万円以下の罰金」、アワビ、ナマコ、シラスウナギ(ウナギの稚魚)などの『特定水産動植物の密漁』は「3年以下の懲役又は3000万円以下の罰金」という厳しい罰則が設けられています。
なお、『漁業権の侵害』は「親告罪」なので、被害者(漁業権を持つ人)が告訴した場合、罪に問われることになります。
「知らなかった」では済まされない
漁業法第195条1項の『組合員の漁業権や行使権を侵害』は、「故意」か「過失」か、で違法性の有無が変わります。
「過失」は処罰されません。ですから、仮に海岸に打ちあがったワカメや貝などをたまたま持ち帰ったとしても、違法にはならないと思われます。
反対に、「知らずに、悪気なく」だったとしても、とろうと思ってとった場合は「故意」とみなされ違法になります。

例えば家族で海水浴に出かけ、上の子どもが泳いでいる間、小さいお子さんは潮干狩りをして過ごす…といった行動は、まったく悪気がなかったとしても「潮干狩りをしよう」という故意があってとるので違法になります。
今、話題のオンラインカジノと同じで、「知らなかった」では済まされないのです。
自宅で食べる分を少しだけだから大丈夫…などと自己判断をせず、事前にしっかり調べ、ルールを守りましょう。
有料の潮干狩り場でルールを守って楽しんで!
これから夏にかけて、潮干狩りをする機会も増えると思います。
せっかくの楽しい時間を悲劇にしないためにも、漁業権の問題がクリアになっている“有料の潮干狩り場”を利用し、決められたルールをしっかり守って、安心して潮干狩り楽しんで下さい。
(牧野和夫弁護士)
取材:高知さんさんテレビ