日本刀の職人=「刀匠」の松葉一路さんが、宮崎県の山間部に鍛刀(たんとう)場を整備した。インバウンド客を呼び込み、刀鍛冶の体験などを提供する予定だ。また、刀鍛冶を目指す人の修業の場としても活用する考え。日本の伝統文化を広める新たな挑戦が始まった。

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宮崎県日向市生まれの刀匠・松葉一路さん(66)。日本美術刀剣保存協会で無鑑査認定され、2022年には県の無形文化財に指定されている日本有数の「刀匠」だ。

日之影町に新たな鍛刀場を整備

松葉さんは2025年2月、宮崎県日之影町に日本刀を作る新たな鍛刀場を、弟子の森本成美さんとともに整備した。

3月23日には、この地で刀を作ることを神様に報告する火入れ式を行い、決意を新たにした。

刀匠 松葉一路さん:
これからやるぞという感じ。現代刀の中でも、最高のものを作っていきたいと思う。

松葉さんの弟子 森本成美さん:
目指すは名刀。それが先生との目標なので、実現していけたらと思う。

日之影町に鍛刀場を整備した狙いとは?

元々、松葉さんは日向市で刀作りを行ってきたが、今回、山間部の日之影町に鍛刀場を整備した。そこには、松葉さんの“新たな狙い”があった。それは、インバウンド客だ。

日本の伝統工芸品である日本刀は、海外でも人気がある。松葉さんの日本刀の購入者のうち、実に約7割が外国人。松葉さん自身が海外に出向いて商談することもあるという。

刀匠 松葉一路さん:
インバウンド客に、刀鍛冶の世界を知ってもらおうということ。ふいごをふいてもらって、玉鋼を赤めてつぶす。

新たな鍛刀場はインバウンド客が見学に訪れることを想定し、通常は片膝をついて行う作業を、椅子に座って行えるようにすることで、外国人でも刀鍛冶の体験をしやすくしている。

日本刀は「美しさを競ってきた武器」

刀匠 松葉一路さん:
日本刀は「美しさを競ってきた武器」という、世界に絶対にない、稀有な存在。そこが日本人の日本人たる所以の最もあらわれている道具ではないかと思う。もっと深く、多角的に体験できる場になるように、これからしていきたいと思う。

刀鍛冶を目指す人たちの修業の場にも

さらに、鍛刀場は、これから刀鍛冶を目指す人たちの修業の場にもしていく。ふいごやハンマーなどを2組そろえ、弟子の森本さんが修業できる環境を整えた。

弟子 森本成美さん:
同じ志を持った皆さん、命がけでやっているので、頑張っている皆さんと刀剣界を盛り上げていけたらと思っている。

松葉さんは、鍛刀場周辺の山並みが日本刀の波紋に似ており、作品作りにいいインスピレーションを与えてくれると話す。

刀匠 松葉一路さん:
刀鍛冶の生き方として、こういう山間地、田舎で日本刀文化を発信できる事は、一つのモデルケースになれるかもしれない。

日本の文化を日之影町から世界へ。松葉さんの新たな挑戦が始まった。

<刀匠・松葉一路(景正)>
1959年生まれ
1989年 宮崎県日向市に鍛刀場を構える
2014年 新作名刀展 日本美術刀剣保存協会会長賞受賞 無鑑査認定
2022年 宮崎県無形文化財

(テレビ宮崎)

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