2025年7月に投票が予定される参議院議員選挙。鹿児島選挙区では、これまでに自民党公認で元参議院議員の園田修光氏(68)、立憲民主党の推薦を受ける尾辻朋実氏(44)、参政党公認の医師・牧野俊一氏(39)の、元職と新人の計3人が立候補を表明している。それぞれの訴えやこれまでの動きをまとめた。
自民党の候補者選びに波乱
自民党現職の尾辻秀久議員(84)が勇退を表明し、自民党鹿児島県連では、後任候補者の選定が難航した。公募で残った2人、県議会代表の外薗勝蔵氏(73)と元参議院議員の園田修光氏(68)の間で意見が割れ、党本部に判断を委ねる事態となった。
結果、園田氏が公認候補に選ばれたものの、外薗氏を推していた県議からは「応援に熱が入らない」との声も上がっている。一枚岩とはいえない状況の中、園田氏は「『一緒に回りましょう』という形で、各県議が協力的に走ってもらっている」と一蹴した。

2025年4月13日の決起大会で、自民党鹿児島県連の森山裕会長は園田氏を「社会福祉のことについて一生懸命取り組んできた。日本の将来のために、鹿児島の将来のために、大事な政治家」と評価した。

元職である園田氏は、「私は菅(義偉)元首相と同期。菅氏が首相になった時は官邸にしょっちゅう行ってコロナ対策をやってきた。相手候補より国政の中で仕事ができる自信がある」として、豊富な政治経験を強みにあげた。
立憲民主党の意外な選択
一方、立憲民主党が手を組んだのは、意外にも尾辻朋実氏(44)だった。尾辻朋実氏は、勇退する尾辻秀久議員の三女だ。自民党の候補者選びで選考から漏れていたが、立憲からの提案で推薦を受けて戦うことになった。
尾辻氏は立憲の支持者に対し、「父の政治しか知らないが、政治は皆さんのすぐ隣にある小さな明かり。その小さな明かりを必ず次の世代の子供たちにまでつなぎたい」と父親への思いを口にした。

自民党現職の娘が、推薦を受け野党第1党の候補として戦うという異例の展開に、地元政界は驚きを隠せない。こうした経緯に連合鹿児島や野党などでつくる5者会議では、尾辻さんを支援するか結論が出せない状況が続いた。
そこを後押ししたのが、立憲民主党の野田佳彦代表だ。野田代表は2月に鹿児島を訪れ、尾辻氏を「『虫の目』から徹底して鹿児島県をチェックし、国政に届けようという方」と評価、5者会議に参加する連合会議の推薦が決まった。

一方で、国民民主は尾辻氏を「応援できない」との姿勢を明らかにし、共産は「支援はあり得ない」と独自の候補擁立を進めている。自民と同様、野党も足並みがそろわない中、尾辻氏は「子供たちが希望を持てる日本に変えたい」と訴える。
新たな挑戦者、医師の牧野俊一氏
この2人に割って入るのが、参政党公認の医師・牧野俊一氏(39)だ。2025年4月13日、牧野氏は「積極財政や反グローバリズムを掲げている参政党から出馬する」と表明し、経済政策に関する見識を強調した。

参政党の神谷宗幣代表も鹿児島市を訪れ、「医者としての知見を期待していたが、経済に対する見識も持っている。政治をやっている方よりも思いを持って、色々なことを勉強してきたと分かったので大いに期待している」と牧野氏への期待を語った。

そして、4月23日に開かれた牧野氏の出馬会見、公認を受ける参政党から市議2人も駆けつけた。牧野氏は日本経済が30年間停滞し国民負担が増えているとして「減税と積極財政を両立していきたい」と決意を語った。
「本当に必要な防災投資・国防投資・研究投資を、お金がないからやらないということ自体が、本当の意味で未来へのツケになるということを訴えていきたい」と牧野氏は意気込む。
鹿児島の未来を左右する選挙戦
止まらない物価高騰や不透明なトランプ関税の行方など、様々な課題を抱える国政の舞台。鹿児島の代表として誰を送り出すのか、地元有権者が注目するところだ。
園田氏は豊富な政治経験を強みに、「相手候補より国政の中で仕事ができる自信がある」と自信を見せる。一方、尾辻氏は「世の中がこんなに変わっているのに政治だけが変わらないでいいはずがない」と主張し、新しい風を吹き込む姿勢を示している。
牧野氏は「本当に必要な防災投資・国防投資・研究投資をお金がないからやらないということ自体が本当の意味で未来へのツケになる」と訴え、積極財政の必要性を強調している。
鹿児島の未来を左右する重要な選挙戦。各候補の主張や政策の違いを見極め、有権者一人一人が慎重に判断を下すことが求められている。夏の参院選に向け、鹿児島の政治の舞台はますます熱を帯びていくだろう。
※情報はいずれも2025年4月24日時点。
(鹿児島テレビ)