愛知県美浜町の民間の美術館「美術の森」が所蔵する縄文時代の「土偶」について、ニセモノではないかと疑問の声があがっています。2025年4月22日、館長が取材に応じました。
■「贋作では?」…「文化遺産オンライン」に掲載の土偶に疑問の声
文化庁が運営している、各地の文化財などを紹介するサイト「文化遺産オンライン」に掲載されていた縄文時代の土偶を巡り、SNSで疑問の声があがっています。

Xの投稿:
ネットオークションに出ている贋作(がんさく)では?
別の投稿:
博物館行きのレベル 逆に怪しい。
愛知県の美術館所蔵という土偶3点について、ニセモノではないかと指摘があり、文化庁が2025年1月、サイトから削除していました。
果たして土偶は本物なのか、ニセモノなのか。美浜町にある民間の美術館「美術の森」に向かいました。

加藤卓司館長がまず案内してくれたのは…。
加藤卓司館長:
兵馬俑というのは、日本でいえば埴輪ですよね。まげも左側についている人は位が低いんです。

凛々しい表情で直立する兵士に、全長7メートルの銅馬車。中国の世界遺産「秦の始皇帝の兵馬俑」のものに似ていますが、戸惑う記者に対し…。
加藤館長:
無傷であるのは世界でうちだけ。もちろん始皇帝時代につくられたもの。

館長によると、30年ほど前に知り合いの中国人から買い取ったもので、発掘された場所など詳しいことは「よくわからない」といいます。
■言葉を濁す場面も…青森県の収集家から入手した「本物」と主張
そして、“問題”の土偶を見せてもらいました。
文化庁のサイトから削除された「遮光器(しゃこうき)土偶」「女人(にょにん)土偶」「怪人土偶」の3点は、たくさんの土器と一緒に並べられ「青森県で出土」などの簡単な説明が添えられていました。

Q.「本物か偽物か?」と言われたら本物だと?
加藤館長:
当然、本物として美術館が展示している。学芸員を置いて。
Q.この遮光器土偶は縄文時代に作られた?
加藤館長:
間違いない、100%。現代に作った人は誰もいない。作れないんですよ。

加藤館長は、土偶は青森県の収集家から買い取った「本物」と主張しつつ、言葉を濁す場面も…。
加藤館長:
「本物」「偽物」という言葉自体がばかばかしい。「本物」「偽物」というのは、日本人だけが言うことであって。
■疑惑を指摘した歴史愛好家「考えにくい」
文化庁に疑惑を指摘した歴史愛好家は、完全な形の土偶が個人同士で取引されるとは考えにくいと話します。
「縄文ZINE」編集長の望月昭秀さん:
縄文時代の遺跡が約9万カ所といわれているんですけど、そのうち土偶が2万点ぐらいあるんじゃないかといわれているんですけど、ほとんどが破片なんです。

「縄文ZINE」編集長の望月昭秀さん:
美術の森の土偶はかなり怪しい作りというか、ヤフオクとかで売られていた土偶と結構作風が似ているんです。
■館長「写真だけで判断許せん」年代測定も辞さず
加藤館長は、文化庁の職員は美術館を訪れておらず、一度も実際の土偶を見ることなく、サイトから削除したと不満を訴えました。
加藤館長:
来た人たちが話をして「私は偽物と思う」と言うならいいけど、見に来ないような人が写真だけで判断すること自体が許せんと。何の根拠があって「現代に作られたもの」と言っているのか。

文化庁は「誤解を招く表記になっていないかを確認している」として、本物かニセモノかの判断を避けていますが、加藤館長は炭素分析による年代測定をしてもかまわないと話しています。
■土偶が掲載された「文化遺産オンライン」とは
「美術の森」の土偶が紹介されていた「文化遺産オンライン」というサイトは、文化庁によると、事前に一定のチェックを受けた美術館・博物館が自由に文化財など掲載できる「ポータルサイト」という位置づけで、掲載する内容について文化庁が審査することはないということです。

「美術の森」によると、土偶のほか「兵馬俑」など100点以上を掲載していましたが、文化庁はすべて非公開にしています。
(東海テレビ)