最初はかゆくならない

足立さんによると、トコジラミによるかゆみにはタイムラグがあるのが特徴で、不思議なことに刺されてすぐは、かゆみも腫れも感じない人がほとんどだという。

足立さんの依頼者の方のトコジラミによる虫刺され。(画像提供:足立雅也さん)

「トコジラミに刺されたときに感じるかゆみは、吸血の際に人の体内に注入されるトコジラミの唾液(血液の凝固を防ぐ役割を果たす)によって引き起こされるアレルギー反応によるもの。だから初めて刺された人は、体内に唾液に反応する抗体をまだ持っていないため、すぐにはかゆくはならないのです。

平均5〜6回刺されると体内に抗体が作られ、それ以降は猛烈にかゆみを感じるようになるようです。そのかゆみたるや尋常じゃないので、甘く見ていると大変なことになりますよ」

30カ所以上刺されて地獄を見た

尋常じゃないというが、どれくらいかゆいのだろうか?2011年頃、足立さんはトコジラミの生態を調査するために、トコジラミが大発生した宿に足を運び、自ら実験台となって刺されてみたことがある。

資料動画を撮るためにホテルに訪れたが…(画像はイメージ)
資料動画を撮るためにホテルに訪れたが…(画像はイメージ)

「そのときはホテルの研修会などでトコジラミについて解説するときに使う資料動画を撮影するのが目的でした。最初は就寝中に血を吸われるシーンを何カットか撮れれば、といった軽い気持ちだったのですが…。疲れていたのでしょうね。カメラを持って布団に横になっているうちに、いつのまにか寝てしまった。

20分ほどして目を覚まして電気をつけるやいなや悲鳴を上げそうになりました。布団の上には数え切れないほどの数のトコジラミがびっしりうごめいていて、服から露出していた手には30匹以上ものトコジラミがはり付き、一斉に血を吸っていたのです」

あまりのかゆさに(画像はイメージ)
あまりのかゆさに(画像はイメージ)

想像するだけでもおぞましい地獄絵図のような光景だが、本当の生き地獄はその後にやってきたという。