踏切がないのに日常的に住民などが線路を横切って通行する「勝手踏切」が、全国で約1万5000カ所、富山県内でも500カ所近くも確認されています。
危険な「勝手踏切」の現状
朝の通勤通学の時間の富山地方鉄道不二越・上滝線の朝菜町駅です。

朝菜町駅がある富山市堀川町は住宅街で、駅近くの線路沿いには高さ50センチのフェンスが張られていますが、この日はそれを跨いで線路内に入り渡る人が相次いで確認されました。

この路線は朝の時間帯(午前6時~9時)に上下11本の電車が通りますが、地域住民によりますと、朝や夕方などの時間帯で線路を渡る人がいるといいます。
*住民
「足の長い人がフェンスをまたぐ。フェンスが外れている。(駅に)行きたくて外したのか」

なぜフェンスを乗り越えて危険な線路内に入り渡ろうとするのか
理由は朝菜町駅の出入口が片方にしかないことにありました。
駅の出入口は堀川町側にありますが、線路を挟んだ反対側の下堀には設置されていません。

そのため、下堀側の住民が駅を利用する場合、駅から250メートル離れた踏み切りを渡り、駅まで行く必要があり、歩いて10分間のロスがあると言います。
*住民「朝や晩に学生が(線路を)通る。踏切に行くよりもこっちの方が早い。暗黙の了解。」


このような踏切が設けられていない線路を住民が通り道として使っている場所は「勝手踏切」と呼ばれ、国土交通省は横断する行為は無断で線路に立ち入る行為であり、”違法”としています。
去年12月までの調査で、勝手踏切は全国で1万5553カ所にのぼり、県内でもこの勝手踏切が483カ所も確認されています。
危険な「勝手踏切」をなくそうと対策も
*リポート
「地域の人によりますと、もともとここは人が通れる空間がありましたが、ネットを張ったことで、通り抜ける人が減ったといいます」

住民によりますと、間違って子どもが線路に侵入しないように町内会で話し合ってネットを張ることにしたといいます。
しかし、それでも線路の横断はなくなっていません。
全国では勝手踏切での死亡事故が…

全国ではこうした勝手踏切での死亡事故が相次いで起きていて、去年4月と10月に広島市のJR可部線では高齢の男性が電車にはねられて死亡する痛ましい事故が起きています。
国土交通省は「危険箇所を中心に横断を防ぐ対策が急務」としていますが、対策が追い付かないのが現状です。
鉄道事業者もコストがかからないフェンスの設置を中心に行っていますが、全区間の閉鎖は費用負担が膨らみます。

また、地元からは通り道がふさがれることに住民が反対する例もあるということで、「勝手踏切」の解消は進んでいません。
*北陸信越運輸局 鉄道技術部・防災課 勝見栄一課長
「安全の担保や設備を考えると、踏切道を通ってほしい。安全面を優先して駅にアクセスしてほしい。」

国土交通省によりますと、鉄道の線路との交差は法律で原則として認められておらず、踏切新設はかなりハードルが高くなっていて、新しい駅の出入口を作ろうにも維持費などがかかるため対策が難しいとされています。
勝手踏切の解消に決め手がないというのが実情です。