国が2025年5月以降に放出している備蓄米の“配送遅れ”が続く中、国が設定した8月末の「販売期限」が迫り、備蓄米の注文をキャンセルする販売業者が全国で相次いでいる。安いコメを求める消費者が今尚多くいる中、国の対応に注目が集まっている。

安いコメがあれば県外にでも買いに

8月、福岡・広川町で行われた備蓄米の販売会。地元のコメ販売業者が、2021年産の古古古米を、5キロ1800円(税込み)で販売した。

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今回の目玉は、購入数の制限がないこと。自分が“欲しいだけ買える”貴重な機会とあって、安いコメを求める大勢の人達が県の内外から詰めかけた。

「うちは家族が多い。9人家族」という買い物客は、「値段が通常の半分なので6袋買った」と満足顔。

更に、22袋も買ったという熊本・荒尾市から来た客は、「地元の備蓄米は、数が制限されていて、すぐに売り切れるから」と、わざわざ福岡まで車を飛ばして来た理由を説明する。

届かぬ備蓄米 迫る「販売期限」

8月に入り、食品などの値上げが相次ぐ中、安いコメを求める消費者のニーズは依然として高いのが実情だが、今、小売の現場では、契約した備蓄米がなかなか届かない中、国が定めた「販売期限」が迫っていることに頭を抱えている。

ドラッグストア『コスモス』小田部店(福岡市)
ドラッグストア『コスモス』小田部店(福岡市)

福岡市にあるドラッグストア『コスモス』小田部店。この日は、前日に入荷したばかりの備蓄米80袋を店頭に並べていたが、入荷ペースは、当初の予想を大幅に下回っている。

『コスモス薬品』は、2022年産の古古米を2万トン随意契約しているが、店舗運営部の垣岩寿明さんによると、「販売できたのは、まだ注文した量の4分の1程度。残りはまだ、販売の見通しが立っていない」と自分達ではどうしようない備蓄米の配送遅れに困り果てているのだ。

農水省は、備蓄米の売り渡し条件として「8月末」という販売期限を設定している。垣岩さんは、「8月中に全ての備蓄米を売り切るのは、かなり厳しい。備蓄米倉庫の方で、作業が滞っているということだが、そこの出荷さえできれば、すぐ店頭に持ってきて販売できる態勢があるのに」と悔しさを滲ませる。コスモス薬品は、農水省に販売期限の延長を申し入れているが、まだ、回答はないという。

配送遅れ 備蓄米キャンセル相次ぐ

農水省によると、全国の多くの小売り店で、備蓄米の到着が遅れていて、販売量は、7月6日時点で、申し込みのわずか15%程度に留まっているとのこと。こうした状況を受け、国は、配送前であれば契約の解除、つまり、備蓄米の注文キャンセルを受け付けていて、7月下旬以降、キャンセルする業者が全国で相次いでいるという。小泉農相は、8月5日の会見で、キャンセルされた政府備蓄米の量は、合わせて約2万9000トンに上ると明らかにした。この内、福岡市に本社を置く『トライアルカンパニー』も申し込み済みだった備蓄米6000トン分を既にキャンセルしたとしている。

農水省は、小売業者からヒアリングをした上で、「販売期限の延長や余った備蓄米の買い戻しなど、いくつかの対策を検討する可能性がある」とし、今後、柔軟な対応を打ち出す方針だ。

(テレビ西日本)

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