宮崎県を代表する観光地・青島。「鬼の洗濯板」や「青島神社」が有名で、サーフィンの聖地化にも力を入れているが、青島は古くからの温泉地でもあった。地に足の着いたもうひとつの観光資源として、いま「青島温泉地計画」がスタートしている。関係者は、観光地青島の新たな柱に成長させたい考えだ。
宮崎県は「温泉目的」の来訪者が少ない

旅行に行くとき、何を目的に場所を選ぶだろうか?2023年度の「じゃらん宿泊旅行調査データ」によると、宿泊旅行の目的として全国的に高いのは「宿」「温泉」「食」となっている。しかし、宮崎県は「温泉」を目的に訪れる人が少ない。全国平均が33.4%に対し、宮崎県は19.3%と、大きな差となっている。同時に「宿でのんびり過ごす」も全国平均が36.4%に対して宮崎県は21.8% こちらも、温泉宿を目的にした来訪が少ない事の表れだろうか。

宮崎市の観光名所・青島にも温泉はあるが、「青島神社」や「サーフィン」に比べると、「温泉」を目的に来る観光客は少ない。そこで、青島を温泉地として広く知ってもらうためのプロジェクトが始動した。
昭和40年代、青島といえば新婚旅行だった

青島は、昭和の時代から新婚旅行ブームのカップルや海水浴客など多くの人で賑わう、言わずと知れた人気のスポットだ。

令和の今も、青島には多くの人が訪れている。そんな青島では、さらなる賑わいを目指して様々な動きがある。

「青島周辺を千葉、湘南に続くサーフィンの聖地にしたい」と2024年7月…

国内最大の面積を誇る「ムラサキスポーツ」が青島に誕生した。
青島ではラクダに乗ることができた

戦前の1939年に開園して以来、宮崎県民に親しまれてきた「こどものくに」。

ラクダに乗ることもできた。多くの県民が思い出として語っている。

あれから十数年、2023年以降は、キャンプ場やカフェもオープンするなど、「こどものくに」は新しく生まれ変わった。また、付近の土地は「市街化調整区域」として店舗や事業所など新たな施設の建設が制限されていたが、2025年4月から規制が緩和され、開発が可能となった。

青島には、この他にも忘れてはならない貴重な観光資源がある。豊富な湯量を誇る天然温泉で、「美肌の湯」が自慢の青島地区の温泉だ。現在、ANAホリデイ・インリゾート宮崎やホテル青島サンクマールなどが知られている。

そして、青島の温泉の歴史は古く、江戸時代にさかのぼる。

青島神社 長友宮司:
「日向地誌」という書物の中に、江戸時代・天保年間にはこの青島で傷を癒したという温泉の記述があるので、古くからあるということがわかる。それが明治時代になったときに、青島には湯の山という源泉の山があって、そこから管を引いて街なかまで温泉をひいていたというふうに聞いている。
青島神社の社務所には、こんな名残が…!

青島神社 長友宮司:
右側の蛇口が、普通の、現在も使っているもの。左側の蛇口が、かつて使用していた昔の温泉を引いたものの名残り。青島の家には蛇口が2つあって、直接お風呂場に引いている家も多かったと思う。

青島地区では、昭和40年代の前半までは、各家庭で水道の代わりに温泉が使われていた。しかし、水の量が不足するようになったことでその役目を終えた。そんな歴史ある青島地区の温泉だが、ある大きな課題が…

宮崎市 観光戦略課 中原剛さん:
青島のホテルや施設には様々な温泉がある中で、観光地・青島に温泉を目的に来られるお客様が少ない状況にある。

青島の温泉の魅力に改めて着目したのが、宮崎白浜キャンプ場を運営する「南九州プロジェクト」の谷村智樹さんだ。
南九州プロジェクト 谷村智樹さん:
観光の誘客を促進していくためには、もうひとつ、地に足の着いた柱が必要じゃないか。中長期的に戦える観光資源の発掘という観点からも、すでにある「青島温泉」が非常に武器になるのではないか。

この提案に、地元の観光関係者が賛同。宮崎市の協力も得て、3月10日からスタートしたのが青島温泉「六湯(ろくゆ)めぐり」。

参加施設は、「このはなの湯」「ANAホリデイ・インリゾート宮崎」「地蔵庵」「青島グランドホテル」「青島フィッシャーマンズ ビーチサイドホステル&スパ」「ホテル青島サンクマール」の6つ。このうち、1500円の「温泉手形」1枚で3カ所を巡ることができる。 期間は4月25日までで、手形は参加施設のほか、宮崎白浜キャンプ場、宮崎市観光案内所(宮崎駅内)などで販売している。

この取り組みに合わせて、宮崎市がこれらの施設の泉質を調査した。その結果、すべての施設で「アルカリ性」が確認され、改めて「美肌の湯」と特徴づけられることが分かった。

今回参加している施設のうちの1つ、「青島フィッシャーマンズ・ビーチサイド ホステル&スパ」。2017年オープンの温泉宿泊施設で、自慢はもちろん“美肌の湯”。

河合皓希アナウンサー:
皆さん、お待ちかね、温泉リポーターの河合皓希です。お湯はかなりトロトロで、肌に少し触れるだけですぐ吸い付くような感じがする。あとは温度が若干低めなので、ゆったりと入ることができると思う。

ヌルヌルとした肌触りの“美肌アルカリ温泉は、温泉のプロが泉質にこだわって厳選した2025年度の「九州八十八湯めぐり~九州温泉道」にも選ばれている。適応症はアトピー性皮膚炎、不眠症、自律神経不安定症など。

青島フィッシャーマンズ・ビーチサイド ホステル&スパ 佐藤雄一郎支配人代理:
青島には温泉という魅力もあるということを皆さまにも知っていただきたい。そして皆さまに温泉という魅力を味わっていただきたい、その一心で今回参画した。常連のお客様だけでなく、新規のお客様も多く来ていただいており、大変うれしく思っているところ。

1948年(昭和23)創業の老舗、青島グランドホテル。こちらも、とろみの強い美肌の湯で、お風呂はなんと全面畳敷き!滑りにくく、優雅な気分を味わえる。

さらに!屋上の露天風呂がスゴい!
河合皓希アナウンサー:
何よりも景色が素晴らしい!どこまでも続きそうな海に、ぽつりと浮かぶ青島。波の音も聞こえるので目や耳からも癒される。泉質は先ほどと同様トロトロで、温度もちょうどいい。

青島で一番の絶景と言っても過言ではない景色を堪能できる屋上露天風呂。適応症は疲労回復、神経痛などで、心身ともに癒される。プロ野球選手がキャンプの際に疲労回復のためにこちらの温泉に来られるということだ。

Q.「六湯めぐり」スタートして反応は?
青島グランドホテル 上田愛美さん:
お得なので、とてもお客様から人気のあるプランになっている。今後は青島の活性化につなげていきたい。また、宿泊だけではなく日帰りの温泉もご利用いただけるので、たくさんのお客様に足を運んでいただきたい。
実は歴史ある「青島温泉地計画」

青島の温泉地計画は、実はこれまでにも数回あった。明治24~25年(1891~92)頃、初代青島村長が、山から市街地へ竹樋(たけとい)で湯を引いて浴場を作って客を誘致。しかし竹樋が不完全だったため、思うようにいかず、結局、とん挫した。
昭和26年(1951)青島村が宮崎市と合併後、観光事業に熱心な当時の市長が青島の観光開発のため温泉のお湯の利用を計画。その後、青島の旅館街にお湯を引いた。

歴史ある「青島温泉計画」は、「六湯めぐり」終了後、データやアンケートを集計して、改めて長期間実施予定とのことだ。
(テレビ宮崎)