鹿児島の郷土料理が詰まった手作りのお弁当を空輸し、首都圏で販売できないか? 大隅半島にある錦江町とソラシドエア(本社・宮崎市)の挑戦が始まろうとしている。町のPRをきっかけに連携が始まって10年余り。自治体と航空会社がタッグを組んだ地域活性化の新たな試みに注目した。
郷土の味がつまった手作り弁当を首都圏で販売できるのか?
町内の農畜産物加工センターでベテラン主婦たちが作った郷土料理の数々。細切りのサツマイモやにんじんなどのかき揚げ「がね」や煮しめ、こが焼きなどが竹の皮に包まれたお弁当。町とソラシドエアが取り組むのは、これを空輸し首都圏で販売することができないか?というものだ。


10年以上続く町おこしの歩み
錦江町とソラシドエア連携の始まりは2013年にさかのぼる。ソラシドエアの機体を使って自治体をPRする「ご当地プレーン」の就航だった。
「元気ファクトリー錦江町号」と名付けられた機体には、町のご当地キャラ「でんしろう」やご当地アイドル「くわがたガールズ」がプリントされ、機内誌や客室乗務員のエプロンまで錦江町づくしとなった。

町内の小学生を対象に「飛行機で東京に行ってかなえたい夢は?」というコンテストも実施された。選ばれた3人の小学生は「錦江町号」で東京を訪れた。「東京スカイツリーから錦江町と都会の違いを確かめたい」と応募した男の子は当時、想像もしていなかったスカイツリーからの景色に思わず言葉を失うほど感動していた。


相互連携協定と多岐にわたる交流
錦江町号が役目を終えてからも町とソラシドエアは関係を深めていった。2014年12月には「相互連携協定」が結ばれ、関係はさらに強化された。イベントへの相互参加や職員の交換研修、さらにはメロンパンやクッキー、オーデコロンなど、コラボ商品の開発も行われた。

錦江町・新田敏郎町長は、「私どもは認知度を上げることが一番大事だったし、企業と連携することも新しい町の展開につながる。変化と進化を続けていく錦江町でありたいということで、この10年間は非常に大きな成果だった」と連携の成果を強調する。
一方のソラシドエア・高橋宏輔社長も、「地元のためになることが存在意義と考えている。その意味では自治体と一緒になって我々のお客さんにもなってもらうし、我々もお手伝いする。そういう良い関係ができて両方がウィンウィンになることが大事」と、自治体との連携に価値を見い出していた。
「24時間」の挑戦
そして2025年度、錦江町とソラシドエアが始める新たな挑戦が冒頭にふれた「賞味期限24時間」のお弁当プロジェクトだ。地元の主婦が腕によりをかけた郷土の味を首都圏で販売することは可能なのか検証する。錦江町役場の宿利原伸一さんは、「『錦江町のおいしいものを都会の人に食べてもらおう!プロジェクト』みたいな感じです」と照れ笑いを浮かべたが、ヨモギの葉を地域の高齢者から買い取って使うなど、地域経済への貢献も計算されているのだ。

ソラシドエア・畦浦隼人さんは「お弁当も24時間しかもたないということで、これまで鹿児島市内ぐらいまでしか販売していなかったということだが、もちろん東京まで届けることは可能と考えている」と、チャレンジへの自信をのぞかせた。今後は、ソラシドエアのスタッフによる試食とアンケート調査を実施し、適正価格や販売可能性を探っていく。

錦江町とソラシドエアの10年以上にわたる連携は、地域活性化の新たなモデルケースとなりつつある。「地域を元気にしたい」という共通の目標に向かって、両者の挑戦はこれからも続く。
(鹿児島テレビ)