警察署の番号を偽装表示する、新たな「特殊詐欺電話」が相次いでいる。
被害に遭った男性は、“県警”に電話を転送された後にLINEに誘導され、求められた個人情報を渡してしまったと話す。警察官を騙った同様の手口は、2025年始めからの2カ月間で被害額が106億円以上に上っている。

警察を名乗る“特殊電話詐欺”急増…

近頃、着信画面に「警察署」の電話番号などを表示させ、相手を信じ込ませる新たな手口の「特殊詐欺電話」が相次いでいる。

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「特殊詐欺電話」の音声を入手した。都内に住む50代の男性のもとに掛かってきた電話には、言葉巧みに個人情報を引き出そうとする巧妙なテクニックがあった。

「警視庁捜査二課」を名乗る男:
警視庁の捜査二課です。

詐欺電話を受けた男性:
お名前頂戴できますか。

「警視庁捜査二課」を名乗る男:
サカモト・マナブと言います。愛知県警から捜査協力要請の依頼を受けてですね。こちら愛知で起こった事件なので、心当たりはないですか?

詐欺電話を受けた男性:
ごめんなさい、全く分からないですね。全く分からないです。ないです。

1時間半に渡る誘導が開始

ここから1時間半に渡り、金を騙し取ろうとする誘導が始まった。

「警視庁捜査二課」を名乗る男:
ここ3年以内に、ご自身の身分証やキャッシュカードを盗難・紛失されたことはありますか?

詐欺電話を受けた男性:
クレジットカードは1回ありますね。不正に使われた形跡があって、新しくした覚えはあります。昨年の秋ぐらいだと思います。

偶然にも、男性は過去「にクレジットカードの不正利用被害に遭っていた。
「警視庁捜査二課のサカモト」を名乗る男は、男性に対し「愛知県警での20日間に渡る隔離調査への協力」を要求した。仕事のためと断ると、男はこう話した。

「警視庁捜査二課」を名乗る男:
(着信番号に)掛け直してから捜査に協力していただく形でもいいですよ。警視庁の電話番号を教えてから、転送の方でよろしいですね。

“愛知県警本部”に電話を転送

そして、電話を“愛知県警”に転送した。

「愛知県警本部」を名乗る男:
電話転送受けました。愛知県警本部です。

詐欺電話を受けた男性:
私が捜査対象になってるみたいで、今、警視庁の捜査二課の方から転送お願いしていただきました。

「愛知県警本部」を名乗る男:
秘密保持とは、何かご存じですか?

詐欺電話を受けた男性:
分かります。

「愛知県警本部」を名乗る男:
こちらの秘密保持案件を公開した場合、漏えい罪が適用されます。起訴されれば、1年〜3年の懲役および200万円の罰金が科されます。

愛知県警本部を名乗る男は、秘密保持の義務を強調した。

「名前・生年月日を…」LINEへ誘導

すると、今度は男性を「LINE」へと誘導する。

「愛知県警本部」を名乗る男:
いま私トークの方にメッセージ入れますので。名前・生年月日・住所・職業ですね。こちらの方に打ち込んで頂いていいですか?

詐欺電話を受けた男性:
はい、打ちました。

巧みな話術で生年月日などを送らせると、その後「最終学歴」や「前科前歴」さらには「誰かに恨まれていないか」まで質問した。

「愛知県警本部」を名乗る男:
仲が悪くて、個人情報流出したケースがありましたので。続きまして、金融リストの方を作成します。登録されていない口座、申告がなかった口座、これは違法な口座とみなして、直ちに私たちが探してすぐ凍結の手配します。もちろん犯罪に使われているのは、押収します。例えば後から出てきたりして、これは凍結してしまうので、これは自己責任という形になってしまうので。

そして、電話は約1時間半にも渡った。

「愛知県警本部」を名乗る男:
まだこの事件捜査中ですので、先ほどお願いしましたが秘密保持、こちらの方を守っていただいて。では月曜日にもう一度連絡しますので。

詐欺電話を受けた男性:
なんなんだよこれ、訳わかんねぇ。

言葉巧みに誘導され、男性は様々な個人情報を伝えてしまった。

「不利益を被りたくない」人間の心理を逆手に取った手口

警視庁によると、警察官を語った同様の手口は、2025年始めからの2カ月間で被害額は、すでに106億2000万円に上った。専門家は、今回の事例をこう分析する。

元警察庁サイバー捜査課長・棚瀬誠さん:
この詐欺というのは、不安を煽る。その瞬間、不安になってパニックに陥るという人間の心理と不利益を被りたくないと、この心理を逆手に取った手口です。そこに騙されるきっかけ、糸口があります。

そして「LINE」に移行させた上で個人情報を引き出したことについては、こう分析する。

警察庁サイバー捜査課長・棚瀬誠さん:
今回の手口に照らすと、本物の警察官であればSNSに切り替えるということはありません。警察署に訪問してもらえれば、SNSを使う理由が全くないです。

男性は最寄りの警察署に相談したことで、詐欺だと気付くことができた。
警視庁は、警察からの電話に見せかける偽装そのものが、できないような仕組み作りを検討していくとしている。
(「イット!」3月20日放送より)

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