3月8日は「エスカレーターの日」。
1914年のこの日、東京で開かれた博覧会の会場で日本初のエスカレーターの試験運転が行われたことにちなんで制定された。
それから111年、歴史的にも貴重なエスカレーターが、実は鳥取・米子市のデパートで、今も現役で稼働している。
上から見ると幾何学模様 スパイラルエスカレーター

そのエスカレーターがあるのは、米子市の「米子しんまち天満屋」。
ここに、山陰では唯一、国内でも珍しい「スパイラルエスカレーター」が設置されている。

デパートやショッピングモールなどにあるエスカレーターといえば、直線的に進むものが一般的だが、このエスカレーターは「スパイラル」=「らせん」状に設置され、昇降する仕組みだ。

4階まで吹き抜けになっている広場を取り巻くようにが配置されたエスカレーターは、ステップも手すりも優雅な曲線を描いている。
最上階から眺めると、幾何学的な文様にも見え、芸術的だ。
豪華さ演出“バブル仕様”

スパイラルエスカレーターが設置されたのは、デパートがオープンした1990年。
まだ、「バブル景気」を謳歌していた時代だ。

米子市では後発になるデパートとして、既存店との差別化を図るため、都会的で豪華なしつらえにしようと採用されたのが、このスパイラルエスカレーターだったそうだ。
世界でも100基あまり 実は貴重なエスカレーター

エスカレーターを製造したのは、大手機械メーカー・三菱電機ビルソリューションズ。
これまでに設置されたのは、国内で37基、世界でも100基余り。その多くは1980年代から90年代に設置され、今もなお現役なのは、世界的にも珍しいということだ。

米子しんまち天満屋の須山翔太課長によると、細かいメンテナンスは月に1度ほど。「お客様に大切に使っていただいているので、35年間、大きな故障なく稼働している」そうだ。
とはいえ、今ではあまり見かけない独特の形のエスカレーター。メンテナンスにも苦労が多いという。
須山課長は「お客様に乗っていただくスペースが大きく、曲線の部分のメンテナンスには非常に細やかな作業を必要とするので、通常の倍の人数、時間がかかる」と打ち明けた。
貴重なエスカレーターはデパートの“顔”

その一方、須山課長は「米子店の顔だと思っています」と話し、店のシンボルのひとつとして、このスパイラルエスカレーターを自慢に思っているそうだ。

国内では、2016年を最後に新設されていないスパイラルエスカレーター。
バブル期の繁栄を今に伝える貴重な“遺産”としても価値があるだけに、末永く、現役で活躍してほしいものだ。
(TSKさんいん中央テレビ)