「後ろが平らで、絶壁になってるかも…」「ちょっと頭が斜めになってる…」赤ちゃんの頭の形を気にする親が増えている。ヘルメットを使った矯正治療を行う広島大学病院の「赤ちゃんの頭のかたち外来」は受診者が増えている。どんな治療なのか?実際に治療を受けた家族の声とともに、その方法を取材した。

“ヘルメット矯正” 1か月で効果

広島大学病院の「赤ちゃんの頭のかたち外来」は開設から2年半で、769人が診察を受け、そのうち366人がヘルメット矯正を選んだ。

この記事の画像(11枚)

広島県三次市から通う父親は、ある日、生後5か月の赤ちゃんの髪を洗いながら「ちょっと斜めになっている」と気づき、この外来を訪れ、3Dスキャンで赤ちゃんの頭の形を測定。

脳神経外科の山崎文之 准教授の診断では「右の後頭部の体積が左の4分の3程度まで落ちていて、右耳の位置がずれている」という。

この赤ちゃんの両親はヘルメット矯正を選択。この治療は赤ちゃんの頭の骨が柔らかい生後6か月頃までに始めるのが最も効果的で5~6か月間ヘルメットをつける。月に1回、ヘルメットの形を調整し、徐々に理想の形へ導く方法。仕組みは歯列矯正と似ている。

この赤ちゃんは1か月で効果が表れ、7か月たった今はゆがみがなくなった。母親は「歯の矯正と違って、この時期にしかできないこともあったので、すごく来てよかったと思う」と安心した様子。

まず診察で原因を特定

病院では、変形は「向き癖」が原因なのか、それとも別の病気なのか、発達の遅れが隠れていないかをまず、小児科医が診察する。

「向き癖」による変形には脳神経外科医が本格的に頭の形を診察したうえで、ヘルメット矯正に入るかどうかを決める。ヘルメット作成には、身体に害のない光で3Dスキャンをとり、頭の形を詳細にチェックする。

ヘルメットの作成は保険適用外で自費となり、以下の費用がかかる。
ヘルメット作成 49万5000円、3Dスキャン 5,500円、メンテナンス毎に3,300円。

頭の形を気にする親が増えたわけは?

赤ちゃんの頭の形を気にする親が増えた背景を山崎医師は「うつ伏せ寝による乳児突然死症候群(SIDS)を防ぐため、仰向け寝が推奨されるようになった影響もあるでしょう」と説明する。仰向けが続くと、後頭部が圧迫されるという。

「向き癖」による変形には、耳の位置が左右でずれることもある「斜頭症」、仰向け寝に多く「絶壁」と言われ、頭の前後の長さが短くなる「短頭症」、横向き寝に多く、頭の前後の長さが横幅を上回る「長頭症」がある。

「向き癖」による変形を予防する方法を聞いた。

山崎医師によると「①同じ向きばかりにならないよう気をつけること」

そして「②首が座ったらなるべく縦抱っこを増やす」これは、ベビーカーや横抱っこだと、頭が抑えられるが、縦抱っこなら、その心配がない。

ただ、治療はあくまで選択肢の一つだ。山崎医師は「頭の形は個性で、多くの方が大人でゆがんだ状態でも普通に生活されているということも分かっているので、そういうことを気にする時代になったというだけのこと」と付け加えた。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。