2024年7月27日、インドで開かれた世界遺産委員会で、新たに世界文化遺産に登録された佐渡島の金山。活動開始から28年という年月をかけ“人類共通の遺産”として認められた。そんな悲願達成から1年が経った佐渡を取材した。

佐渡島の金山 “世界遺産”効果で観光客増加!

1601年に開山してから約400年間で金78t・銀2330tを産出した日本最大級の金銀山である佐渡島の金山。

佐渡島の金山
佐渡島の金山
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鎖国で技術の輸入が制限される中、機械を使わず手作業で金の採掘が行われた点や、その生産体制を伝える集落などが現在も残っている点が評価された。

世界遺産効果は大きく、当時の採掘の様子などを伝える観光施設・史跡佐渡金山は前年に比べて来場者数は約2万人増えたという。

史跡佐渡金山
史跡佐渡金山

駐車場には、多くの観光バスやレンタカーの姿が見られた。

名古屋から来た観光客は「テレビで有名になって、来たことがなかったので1回生で見てみたくて来た」と話し、三重から来た観光客は「やっぱり世界遺産に選ばれたというところで、行ったことなかったので来たいなと思っていた」と笑顔で話した。

こうした観光客の増加を受け、史跡佐渡金山では複数あった見学コースを1本化したり、発券機を設置したりして混雑の解消に努め、満足度向上を図っている。

アニメ映画の舞台を思わせる場所や人気グルメも!

さらに、世界文化遺産の構成資産ではないものの、アニメ映画の舞台を思わせる北沢浮遊選鉱場跡はSNSを中心に話題に。

北沢浮遊選鉱場跡
北沢浮遊選鉱場跡

遺跡を一望できるカフェにも、連日多くの人が訪れている。

この日、訪れていた観光客からも「本当にラピュタみたいで、これを見るためだけに来たみたいなもの」「今、東京でも電車の中で宣伝をしていて、想像して来たが、想像よりよかった」などと絶賛の声が並んだ。

観光客を中心に人気なのが、道遊の割戸を模した『佐渡島黒豚金山カレー』。

佐渡島黒豚金山カレー
佐渡島黒豚金山カレー

ご飯がV字に割れていて、金に見立てた金粉もまぶしてある。からすぎず甘すぎず、そしてお肉もごろっと贅沢に入った逸品だ。

観光客増加は「一丸となってやってきた結果」 一方で課題も…

もともと観光地だった佐渡だが、登録直後の24年8月の観光客数は、前年より7000人ほど多い9万1464人。

1年間では47万人が訪れていて、観光目的の人の割合は前年より17.6%増加した。

登録前から国内外で、様々なプロモーションを行ってきた県観光文化スポーツ部の前川翔政策監は「これは県・市・民間団体、色んなところが盛り上げをして一丸となってやってきた結果だと感じている」と評価。

ただ、繁忙期は飲食店の不足など、受け入れ体制に課題もあるという。

「地域の飲食店の方々も努力をしていて、色々なトライアンドエラーをしているところ」

二次交通の課題解決へ“ライドシェア”実施

その“トライ”の一つが、バスやタクシーなどの二次交通に関する施策。

佐渡市交通政策課の中川裕二課長は「佐渡島内を走っているタクシーは現在、約50台。トップシーズンでは足りていない」と話す。

こうした課題を解決しようと、24年7月末から9月にかけて、一般ドライバーが自家用車でお客を運ぶライドシェアを実施。

ライドシェア
ライドシェア

中川課長は「お客様からライドシェアの申し込みが届いたのが200件以上。そのうちお客様を実際にお迎えに行き、目的地まで配車できたのが約半分の110件くらい」とその実績について説明する。

25年は、前年の約2倍となる15人のドライバーで、期間を増やして実施するほか、定期観光バスの実証運行も行う。

「夏以外のシーズンも」通年での観光客誘致目指す

ただ、離島である佐渡は気象の影響などを受け、季節によって観光客数が大きく増減するのが現状だ。

中川課長は「受け入れ環境もあって、夏の観光客をどんどん増やしていけばいいというわけでもない。事業者の方々もシーズンを通して、通年で営業していかないとなかなか利益も生み出せない。夏以外のシーズンにどれくらい佐渡に来てもらえるか、その仕掛けを考えていかなければいけない」と話す。

また、前川政策監も「今は佐渡をフックに新潟圏の交流人口拡大に向けて取り組んでいるが、県としてはこの効果を佐渡のみならず新潟県全体に広げたい」と今後の課題について語る。

混雑の緩和や事業の継続・新たなビジネスチャンスの創出には、オールシーズンでいかに観光客を受け入れていくか。

世界文化遺産だけない佐渡の魅力発信が、今後の重要なカギとなりそうだ。

(NST新潟総合テレビ)

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