中国の輸入停止で億単位の損失が出ている新潟県佐渡市のナマコ業者。東京電力による福島第一原発の処理水の海洋放出に伴う影響だが、その因果関係は認められないとして東京電力からの補償は受けられないという。それでも「ナマコで地域を盛り上げられれば」と努力の日々を続けている。
ナマコ養殖業者 中国の輸入停止で苦境に…
佐渡市でナマコを養殖する浦島三和の須藤由彦社長はつぶやいた。
「まさかこんなに遠くにいる佐渡の人たちがこういうことになるとは夢にも思わなかった」

夢にも思わなかった出来事。それは東京電力による福島第一原発の処理水の海洋放出に伴う影響だ。
2023年8月の海洋放出後、中国が日本の水産物の輸入を停止。中国向けにナマコを養殖していた須藤社長は「中国の市場というのは、どうしてもなくては困る市場」と話す。
このとき中国への輸出の道が閉ざされ、中国から来ていた養殖の技術者も帰国するなど大きな被害を受けていた。
「因果関係認められない」東電から補償受けられず
東京電力は佐渡市で2023年12月、損失に対する賠償についての説明会を開き、ナマコの養殖を行う企業の影響も調査していたというが、2024年10月、補償に対する回答が届いたという。

須藤社長は「東電は処理水を流したのとは因果関係がないと。東電からの補償は一切ない」と状況を説明する。
中国の輸出停止による損失は億単位に上るが、処理水放出との因果関係は認められないとして補償を受けられず。
「ナマコで地域盛り上げたい」安定供給へ稚ナマコ放流
ただ、こうした状況にあっても「前に進めるしかない」と前を向く須藤社長。

2月27日には養殖してきた稚ナマコを佐渡市の漁港に放流。
中国向けの輸出再開、そして世界文化遺産に登録された佐渡島の金山を見に訪れる中国人観光客の需要などを見込んで、地域と連携しながらナマコの供給体制を構築していく考えだ。
須藤社長は「安定供給できるということを目標にしている」と話す。

海洋放出により危ぶまれた事業の継続。
東京電力による補償もない中、それでもナマコで地域を盛り上げられればと努力の日々が続いている。
(NST新潟総合テレビ)