終盤戦はトランプ流“どぶ板選挙”で激戦州を集中訪問

9月7日の「レイバーデー(労働者の日)」が過ぎ、アメリカ大統領選挙はいよいよ終盤戦に突入した。今回の選挙では、新型コロナウイルスの影響で郵便投票の割合が激増し、有権者の意思決定が従来よりも早まることが予想されている。そのため、両陣営は早期の支持獲得に向けて全開モードだ。

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トランプ大統領は10日、激戦が予想されるミシガン州を訪問し、「私が負けるなんて考えられるか。最悪の候補に負けるなどあり得ない。ミシガンよ、そんなことはやめてくれ」と支持を訴えた。

激戦州ミシガンで演説をするトランプ大統領 2020年9月10日

トランプ大統領は、8日にはフロリダ州、ノースカロライナ州で演説を行うなど、激戦州をたて続けに訪問。コロナ禍でも大統領専用機で華々しく登場し、有権者に直接対面するトランプ流“どぶ板”選挙を展開する。

背景にあるのは、支持率での劣勢だ。

最新情勢は、依然トランプ大統領が民主党・バイデン候補にリードを許す形だが、全国の世論調査(リアル・クリア・ポリティクス)では、一時10ポイント近くあった差が10日現在、7ポイントに縮小した。トランプ大統領自身も「良い結果が出ている」とアピールするなど、勢いに自信を見せている。

勝敗を決める「選挙人」とは・・・

ただ、調査の結果は必ずしも選挙の勝敗に直結しない。2016年の選挙では、ヒラリー・クリントン候補が全国の一般投票で300万票近くリードしたものの、実際に勝利したのはトランプ大統領だった。理由は、大統領選の「選挙人」というシステムにある。

選挙人の総数は538人。州ごとに割り振られた選挙人をより多く獲得した候補が大統領になるため、270人が勝敗ラインとなる。

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この選挙人を、ほとんどの州が「勝者総取り方式」で割り当てる。つまり、州ごとに行われる有権者の一般投票で、より多くの票を集めた候補が州の選挙人をすべて獲得する。一般投票の得票数がたとえ僅差であっても、勝者が選挙人を総取りするため、一般投票の全国の得票数と勝者が必ずしも一致しないことが起こりうるのだ。

カギを握る州はどこ?「激戦州」最新情勢

そのため、選挙戦略上、重要なのが選挙の度に共和党と民主党の支持が変わる「スイング・ステート」と呼ばれる激戦州だ。政治専門紙「ポリティコ」は、今回の大統領選で勝敗を左右する特に重要な州として、アリゾナ、フロリダ、ジョージア、ミシガン、ミネソタ、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ウィスコンシンの8州(合計127票)をあげた。これらの州で、トランプ大統領は白人労働者階級、バイデン氏はアフリカ系、ラテン系の間でいかに支持を広げられるかが、勝敗のカギとなると指摘している。

全国同様、激戦州もバイデン氏が優勢だが、トランプ大統領が猛烈な追い上げを見せている。激戦6州の支持率平均値(リアル・クリア・ポリティクス)では、7月に6ポイント以上合った差が9月に入り3ポイント台に縮小。いつ攻守が入れ替わってもおかしくない情勢だ。

トランプ大統領はこれらの州での活動を集中させ、巻き返しを狙う。対するバイデン氏も、トランプ大統領に比べ数は少ないものの、オンラインから現地訪問に戦略を切り替えた。9日には、ミシガン州を訪問し、「トランプ大統領は新型コロナウイルスの脅威を知りながら国民に嘘をつき続けてきた」と批判を展開した。

■トランプ&バイデン両候補による激戦州訪問(9月)
トランプ大統領
9月1日  ウィスコンシン州
9月2日  ノースカロライナ州
9月3日  ペンシルベニア州
9月8日  フロリダ州、ノースカロライナ州
9月10日 ミシガン州

バイデン候補
9月3日  ウィスコンシン州
9月7日  ペンシルベニア州
9月9日  ミシガン州

選挙当日夜に“赤い蜃気楼”トランプ大統領が勝手に勝利宣言!?

一方、焦点の「郵便投票」を巡って、前代未聞の予測もでている。

選挙戦略を研究・提供する「ホークフィッシュ」の分析では、郵便投票の集計には数日から数週間かかるため、大統領選当日には選挙結果が判明しない可能性が高い。そして、郵便投票の利用者は民主党支持者が多いことから、郵便投票の集計が終わる前の段階、つまり、一般投票の結果から大統領選当日の11月3日夜の段階では、トランプ大統領が圧勝して見える可能性が高いという。

この現象を「red mirage(赤い蜃気楼)」と名付けた上で、トランプ大統領が正式な結果判明前に勝手に勝利宣言をし、郵便投票の結果を無効化しようとするのではないか・・・と注意喚起している。その場合、選挙結果を巡る訴訟に発展することも想定される。

新型コロナウイルス、郵便投票、人種差別問題・・・前例のない要素で、終盤戦は波乱含みの展開となりそうだ。

【執筆:FNNワシントン支局 瀬島隆太郎】
【表紙デザイン:石橋由妃 】