有権者の半数以上が期日前投票へ

コロナ禍で行われる今回の大統領選は異例尽くしの選挙戦となっているが、これまでと最も違うのは、郵便投票の割合が激増する点だ。最新の世論調査では投票所での感染リスクを避けて52%の人が郵便投票などの期日前投票を行うと答えたのに対し、11月の投票日に直接投票をすると答えた人は33%にとどまった。

また、前回の大統領選の倍近い約8000万人の有権者が郵便投票に切り替えるとの見方も示されている。つまり、有権者の多くが投票日よりもずっと前に投票を済ませることになり、このことが大統領選挙の戦略にも影響を及ぼし始めている。

ノースカロライナ州に設置された郵便投票専用の箱(ABCテレビより)

9月末には全米約6割の州で郵便投票開始

この郵便投票だが、接戦州ノースカロライナで9月4日に郵便投票用紙が配送されたのを手始めに9月末までに全米の6割近い29の州で投票が始まる。有権者は郵便投票の時点でトランプ大統領か民主党のバイデン候補か、どちらに投票するかを選ばなければならない。これまでと違い、多くの有権者が11月3日の投票日より前の早い段階で心を決めることになるわけだ。

ノースカロライナ州で箱詰めされ発送を待つ郵便投票用紙(9月3日撮影 AP)

従来の大統領選挙では、候補同士の一騎打ちとなる討論会が勝敗を決する大きな山場となってきた。世論調査で猛烈な追い上げを見せるも依然バイデン候補にリードを許しているトランプ大統領にとっては、劣勢を挽回する格好のチャンスでもある。しかし、郵便投票は既に一部で始まっており、9月末から始まる3回の討論会を見ずに投票する有権者も増える可能性がある。9月中のパフォーマンスが選挙結果に直結する事態となっており、両陣営ともに矢継ぎ早な対応を迫られている。

セプテンバー・サプライズに怯える両陣営

過去には大統領選の直前の10月に情勢を大きく変える「オクトーバー・サプライズ」が度々報じられ、両陣営はその情報に戦々恐々としてきた。選挙戦終盤に候補者に不利な情報などが突然表沙汰になれば、ダメージが大きく勝敗に直結するからだ。

前回の2016年の大統領選では、トランプ大統領の過去の女性蔑視発言の音声が暴露された一方で、民主党のクリントン候補に対しFBI(アメリカ連邦捜査局)が私用メール問題について捜査再開を発表するなど、大統領選を揺るがす大きな出来事が発生した。

今回の大統領選は郵便投票の増加により、有権者の判断時期が前倒しされることから、情報戦もすでに激しくなっている。オクトーバー(10月)を待たずして9月に「セプテンバー・サプライズ」が有るのではないかとの見方が広がっている。

激戦州ペンシルベニアで演説するトランプ大統領 (9月3日 ABCテレビより)
激戦州ウィスコンシンを訪問する民主党バイデン候補(9月3日撮影 ABCテレビより)

激しさを増す情報戦

米誌アトランティックは3日、複数の関係者の話として、トランプ大統領が2018年11月にフランスを訪問中に、第一次大戦で戦死した米兵約1800人が埋葬された墓地への訪問予定を「大勢の負け犬が埋まる場所になぜ行く必要があるのか」と言ってキャンセルしたと報道した。

トランプ大統領は即座に「フェイクニュース」だと否定したが、一部のメディアは、これこそ「セプテンバー・サプライズ」の第一弾ではないかと報じている。というのも、軍は伝統的に共和党の牙城とされ、今回の大統領選でトランプ大統領が死守しなければならない重要な支持基盤だからだ。現役軍人は130万人、退役軍人は1820万人いるとされ、この「負け犬」報道がトランプ大統領にとって大きな打撃となるのか注目されている。

【執筆:FNNワシントン支局長 ダッチャー・藤田水美】