初の日米に続き、米韓首脳会談実施へ

中国をけん制する姿勢を鮮明に打ち出した日米首脳会談。アメリカのバイデン政権が、初の対面での首脳会談の相手として日本を選んだ理由は、対中国で歩調を合わせられる東アジア最大の同盟国だからということに尽きる。一方、日米に続く形で、5月に予定される2番目の首脳会談の相手は、韓国・文在寅大統領となる。バイデン政権としては、韓国を引き込み中国包囲網の構築に弾みを付けられるかが大きな焦点だ。

しかし、安保はアメリカ、経済は中国に依存する韓国にとって、アメリカが迫る「民主主義と専制主義の戦い」という“二元論”は、米中どちらかを選ぶ「踏み絵」に等しい。米韓首脳会談では中国の報復を恐れ、及び腰の韓国をいかに説得するのかが問われる。

アジア重視に舵を切ったバイデン政権にとって、日韓、日米韓での連携は開かれたインド太平洋戦略の要の一つだ。アジアの同盟国として中国に対峙する日本と韓国をアメリカの専門家はどのように見ているのか。日米首脳会談の評価、来る米韓首脳会談の見通し、日米韓3カ国の今後などについて、東アジアの安全保障問題に詳しいハドソン研究所のパトリック・クローニン氏にインタビューした。

ハドソン研究所アジア太平洋安全保障部長 パトリック・クローニン氏
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米・専門家「日米同盟は満開で、新たな特別な関係に」

ーー菅首相の初訪米をどのように評価するか?

パトリック・クローニン氏:
日米同盟は「満開」の状態で、インド太平洋地域において、新たな特別な関係を築いていると思う。菅首相の政治状況は国内問題次第で、有権者が決めることだが、日米両政府が共通の戦略を掲げて取り組んでいることに疑いの余地はない。菅首相の訪米は、同盟関係という点では間違いなく成功だった。日米の外交政策はシンクしている。

ーー菅首相の外交手腕は?

パトリック・クローニン氏:
彼はいつも無口で控えめだが、日本のほとんどの首相も同じだ。台湾に関する記述でさえ、彼は過剰な演出もなく、笑顔だけでやってのけた。非常に理に適うやり方だったと思う。バイデン大統領は敵を作ることを嫌がる人なので、そのスタイルにぴったり合っていた。しかし、同時に、日米両国の国益を守るために、かなり厳しい姿勢を取ったことも事実だ。

日米首脳会談 米側が用意したハンバーガーに両首脳は手を付けず(バイデン大統領公式ツイッターより)

ーーなぜ日本が最初、韓国が2番目となったのか?

パトリック・クローニン氏:
日米同盟は長い間、インド太平洋地域の安定、繁栄を構築するための礎だった。対する米韓は、第一に北朝鮮、第二に北東アジアといった具合で、朝鮮半島に焦点を当てる傾向がある。だから、日米首脳が幅広い戦略について話すのは当然の流れだ。一方、米韓は、朝鮮半島だけでなく、広い地域を見据えた同盟関係として、より前向きにビジョンを築き始めていて、長期的な移行過程にあると考える。

また、西から東に力がシフトし、アジアがインド太平洋の中心であり、世界経済と地政学上の“コックピット”であることも明白であり、一連の首脳会談は適切だ。アメリカにとって不可欠な同盟国であり、アジア太平洋地域で最大の3つの民主主義国が集まり、法の支配を確認しようとしている。

韓国裁判所の決定「心強い」 日米韓前進に期待

ーー日韓関係には課題も多い。日米韓の3国間関係への影響は?

パトリック・クローニン氏:
重要なのは、どちらが欠けても成果は得られないということだ。3国間関係が前進することを期待している。その上で、慰安婦問題をめぐり、韓国の裁判所がある種の主権や原則を維持する選択をしたことについて、心強いと感じた。少なくともこれ以上、緊張が高まらないことが示された。半導体の供給網、気候変動問題など、3カ国は多くのことを共有している。

米韓首脳会談の見通し 対中国では課題も・・・

ーー米韓首脳会談の見通しは?対中国で異なる立場をとる韓国との協議では、課題も?

パトリック・クローニン氏:
対中国では隔たりがあるため、首脳会談では、北朝鮮問題や気候変動問題により注目が集まるだろう。ただ、北朝鮮との交渉にどのように対処するかについては、戦略的な違いがあるのは明らかだ。韓国はバイデン政権により柔軟にアプローチするよう促した。米側が妥協する可能性もあると思う。

対中国では、より課題が多い。バイデン政権が特に、差別化して扱いたいと考えているからだ。透明性や貿易慣行、知的財産や人権についてのことだ。しかし、文政権はそこには触れたがらないだろう。韓国の3分の1を占める輸出相手国となる中国を直接攻撃したくないからだ。米中の大国間で、より戦略的にバランスを取りたいと考えている。

バイデン大統領は文政権に、中国にどう対処するか選択の余地を与えるが、気候変動問題では両国が協力を求めている。これは、中国への圧力にもなる。単に中国と協力するだけではない、ということだ。

韓国は、近年朝鮮半島に焦点を当てる傾向が強いが、もう一度その焦点を広げようとすることは米韓の利益となる。バイデン政権は、2国間、3国間、多国間を問わず、韓国との協力を望んでいる。気候変動、供給網などでは、大きな協力のチャンスがある。文政権にとって、南北関係とはかけ離れた話になるが、再び世界で大きな役割を果たすことにつながる。

対中包囲網構築で米韓は連携できるのか

文大統領 レガシー作りで成果を望む可能性

ーー2つの首脳会談を通じて、日韓の協力関係改善が進む可能性はあるか?

パトリック・クローニン氏:
韓国の大統領にとっては、任期満了を控え、レームダックと戦わなければならない時期でもある。通常では、国粋主義的な方向に向かう傾向があり、過去には日本との関係が悪化した。今回、ソウルや釜山の市長選での惨敗を考慮すると、逆に日韓の関係改善が進む可能性がある。

文大統領はレガシーを意識し、菅首相が日米の強固さを示したのと同じように、できるだけアメリカとの緊密さを示したがるだろう。これは、米韓首脳会談の成果を望む上で、良い兆しだと思う。

ーー対中が最優先事項のバイデン政権は、韓国のスタンスを受け入れられるのか?

パトリック・クローニン氏:
中国をめぐる韓国の地理、歴史、経済的な結びつきは日本やアメリカとは異なり、違いも生じる。日本も過去、あまり違いはなかったが、変化した。これまで、双方とも中国を懸念し、中国による悪意ある行動を抑えるために協力を望んでいたものの、誰も中国をやり玉にあげる国になりたくなかった。しかし、私の韓国の友人は、韓国でこれほど中国への懸念が高まったことはかつてなかった、と言っている。だから、韓国も追いついてくるだろう。

【執筆:FNNワシントン支局 瀬島隆太郎】