大阪・関西万博の開幕まで1カ月余り。福井県は県内全ての小中高生に入場券を無料配布することを発表したが、これが議論を引き起こしている。交通費や家庭の事情などによる“不公平感”があることが要因。現状を取材した。
55年ぶりとなる大阪での万博
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに4月13日から10月13日まで大阪市の夢洲で開催される大阪・関西万博。150の国と25の国際機関が参加し、最新の科学技術や文化が展示される。

これまで日本では、大阪や愛知などを会場に5回の万博が開催された。太陽の塔をシンボルに開催された前回の大阪万博は1970年。関西電力初の原発、美浜原発から大阪万博の会場に電気を送り届け、当時の新しいエネルギーである原子力の時代を切り開いたともいわれている。
「行かない」「気にはなる」
あれから55年が経ち、大阪で2回目の万博が開かれることについて県民の声を聞くと―

県民からは「(万博は)聞いたことあるが興味がない」「行かない」「交通の便も悪いし、宿泊も高い」と消極的な意見が多い一方、「春休みに県外へ家族旅行することは考えているが(大阪・関西万博が)いま初めて知ったから気にはなる」と言う声も。
行けない子供も…公平性は?
福井県は1月、県内の小中高生約8万人を対象に万博の入場券を無料配布することを発表。事業費として2024年度補正予算案に1億3600万円あまりを計上した。

県は、学校を通して入場に必要なチケットIDを配り、各自が都合のいい日時を選んで予約することを想定している。大阪までの交通費や家族のチケットの購入費は自己負担になるため、家族ごとに判断が異なってくる。税金を使っての無料配布に、議会からは公平性を問う声も上がっている。
福井県も“恐竜”テーマに出展
今回の万博は、木製の大きなリングをシンボルに、各国の特色を生かした展示場やパビリオンが設けられる。福井県も出展し大きく3つのエリアで構成する。▼アーゲートエリアでは、実物大の肉食恐竜フクイラプトルがお出迎え▼発掘体験エリアでは、懐中電灯型のデバイスを壁や天井にかざすことで、恐竜化石発掘を体感できる▼時空の旅エリアでは、大型スクリーンに恐竜の繁栄などを紹介する仮想現実が投影され、来場者に恐竜が襲いかかるような演出もある。県では、恐竜王国福井の魅力を日本はもちろん世界の多くの人に知ってもらいたいとしている。
原発立地町では無料バス運行
全国一の原発が立地する福井県。嶺南地域では、美浜町、おおい町、高浜町の原発立地3町について、関西電力は原発立地地域の振興を目的に、小中学生と保護者480人を無料招待する。
各町と共同でバスも運行する。さらに美浜町は独自でもバスを運行し、町内全ての小中学生が無料で会場まで往復できるようにする。

県が小中高生へ入場券を無料配布することを受けて、県内の他市町の対応を聞いたところ、学校から万博会場までの直通バスを出すと回答した市町はなかった。修学旅行に組み込んでいたという学校はみられたが、無料配布を受けての対応ではなく、基本的には学校の判断にゆだねられている。
県民からは「子どもだけで万博は行けない。宿泊費や時間もかかるので誰も行かないと思う。やり方を考えないといけないのでは」という声も聞かれた。
地元の大阪府や近隣自治体では、学校単位での無料招待事業をめぐって、来場を取りやめる学校や自治体が相次いでいる。要因としては▼熱中症対策など安全面のリスク▼バス代高騰などによる交通費の保護者負担などがあるが、今後、全国的にはどんな動きが広がっていくのか注目される。