人によっては立っていられないほどの痛みがある生理痛。文部科学省は2023年、生理痛で入試を欠席した場合も「追試験」の対象になることを全国の教育委員会に通知し、各都道府県でもすでに運用されているが、制度を知っているのは女子生徒の1割未満というアンケート結果もある。男性には想像するしかない生理の大変さ。今、理解を広げようという動きが広がっている。

学長も体験「体で理解できた」
「本当にこんなに痛いんですか?」

仙台市にある東北工業大学で開かれた生理痛を体験する研修で、参加者が思わず声を上げた。使用したのは大阪ヒートクール社が開発した生理痛を体験できる装置「ピリオノイド」だ。お腹に貼ったパッドから電流を流し、痛みを疑似体験する。「弱」「中」「強」の3段階の痛みが体験でき、開発企業によると、女性の8割以上が「強」と同じか、それ以上の生理痛を感じているという。

研修に参加を希望したのは教員や学生など30人。中には学長の姿もあった。研修が始まると、想像を超える痛みに思わず顔がゆがむ。東北工業大学の渡辺浩文学長は「強になると差し込むような痛みがあった。職場であれば、仕事に差し障りも出るだろうというのが本当に体で理解できた」と話した。

つらいことを言いやすい環境へ
生理痛への理解を深め、働きやすい職場づくりなどにつなげようという狙いがあるという研修会。男子大学生は「自分が女性だったら耐えられない」と驚き、男性教員は「つらいということを言いやすい雰囲気を職場に作っていかなきゃと思った」と考えるきっかけになったと評価していた。

大学は今後、生理痛に悩む女性職員や女子大学生のための制度作りをしていくという。
入学試験でも追試験の対象に
配慮は入学試験の場にも広がっている。文部科学省は2023年、生理痛や月経前症候群で入試を欠席した場合でも「追試験」の対象になると全国の教育委員会に通知。宮城県教育委員会も2024年の公立高校入試から生理による体調不良を追試験の対象にすることを明示した。一方で、制度変更は受験生にほとんど知られていないという。

知っている中学生は1割に満たず

東北芸術工科大学4年生の櫻井心音さん(22)は学習塾で講師としてアルバイトをしながら、その問題に気づいた。卒業制作のテーマに「制度の啓発」を選び、塩釜市の中学校で女子生徒を対象にしたアンケートを行うと、回答した141人の3割が、生理痛が原因で学校を休んだことがあると回答した一方、追試験について知っていたのは1割に満たなかったという。

泣きながら帰る子も 状況を変えたい
櫻井さんが学習塾で教える中学生の中には、生理痛がひどくて泣きながら帰る子もいたという。3年間、進学のために勉強してきても、志望校の入学試験はたった1回。櫻井さんは「生理だったから受験に落ちてしまったという後悔がないようにしたい」と受験生をサポートすることを決めたという。

もっと多くの人に、生理痛も追試験の対象となったことを知ってほしい。櫻井さんは制度の仕組みを分かりやすく紹介したフローチャートを作り、行政や教育機関に対しても広報を強化してほしいと申し入れた。自治体によっては、櫻井さんが作成したフローチャートを中学校に配布することを検討しているところもあるという。

宮城県の公立高校入試は3月4日に行われる。櫻井さんは全ての受験生が体調を心配することなく、試験に集中できることを願っている。