開店するとすぐに売り切れてしまう人気のクッキー屋さんがある。食べるのがもったいないと思ってしまうほどかわいくて特別なクッキーの、人気の秘密に迫った。
開店後30分足らずで完売
長崎市のみらい長崎ココウォークのイベント「よりみち雑貨市」のため、オープン前の2時間以上も前から販売準備を進めるのは「ヒナミノクッキーkoti(コティ)」の朝永舞子さんだ。

バレンタインデーを翌週に控えたこの日、店に並んだのは朝永さんが作った、ハート形やかわいい女の子、ワンピースを着たネコが描かれたアイシングクッキーだ。

顔や表情はひとつひとつ違い、「女の子がバレンタインで何を贈ろうか悩んでいる感じ、楽しい悩みのあるバレンタイン」というイメージで作られた。
そして午前10時。この日の長崎市内は雪が舞う天気だったが、施設のオープンと同時に多くの人が駆け足で朝永さんのクッキー販売場所へ。あっという間に人だかりができ、クッキーは飛ぶように売れていった。

購入した人は「イベントに来た時に買えないことが何回かあったのできょうは朝いちで来た。ビジュアルと味がやみつきでリピーターです」とようやくゲットしたクッキーを大事そうに持ち帰っていた。また客の中には男性も。
クッキーを購入した男性:妻がきのう出産して入院中なので買ってきてと頼まれた。惜しみなく買いました

朝永さんも男性客からの思いがけない嬉しい報告に、笑顔を見せていた。
ヒナミノクッキーkoti 朝永舞子さん:奥さんの(出産後の)願いが私のクッキーだったと聞いて嬉しい、すごく嬉しい、パパ買いにきてくれてよかった
人生の節目に特別なクッキーをと全国から注文が
朝永さんのもとには節分などの行事や結婚、誕生日などに特別なクッキーを作ってほしいと全国から注文が舞い込む。店を持たず、主にSNSだけで注文を受けているが、既に5月中旬まで予約でいっぱいだという。

朝永さんは商品の企画からクッキー作り、ラッピング、販売まですべて1人で行っているため、量産ができない。

不定期でイベントなどにも出店しているが、この日も用意した約100個の商品は30分足らずでほぼ売り切れてしまった。

朝永さんが作るクッキーは塩を少し入れてこんがり焼いていて甘いアイシングクリームとのバランスがいいように作られている。味の評判も上々だが、見た目の面白さやかわいさが他にはないと多くの人の心を掴んでいる。
ヒナミノクッキーkoti 朝永舞子さん:何にでも変身できるクッキー、クッキーだけどクッキーじゃない感じ、よくこれ何ですかと聞かれる、箸置きですか、マグネットですか、食べられるんですかと。食べられないと言われるけど食べてほしい、見て楽しいし食べてもおいしいし2度おいしい
転機:保育士だった朝永さんがアイシングクッキーにハマったワケ
元保育士で3人の子どもの母親でもある朝永さんは、絵を描くことが好きで大学は美術科に進んだ。もともとはクッキーへの興味はなかったという朝永さんだが、友人からアイシングクッキーのワークショップに誘われたことをきっかけにその魅力にハマってしまったという。

朝永さんは「ちょうど子育て中で描いていると集中できてリフレッシュできた。絵を描くことが好きだったので想像が沸いてきて私もワークショップをやりたいと思うようになった。ハマっちゃいましたね。(ワークショップの)帰りに粉糖と食用色素を買ってすぐにやりました」と当時を振り返る。

クッキーのデザインはふとした瞬間に浮かぶイメージをノートに書き込んで考えている。そしてアイシングクッキーの楽しさを多くの人に知ってほしいと長崎県内各地でワークショップも開いている。バレンタイン前日のこの日は自分だけの特別なクッキー缶を作ろうと20代から60代のおよそ10人が参加した。
アイシングクッキー作りのポイントは
アイシングクッキーに使うのは粉砂糖と卵白をクリーム状に練り上げたもので、クリームが「アイス(氷)」のように見えることからその名がついたと言われている。

デザインを描く上でポイントとなるのがクリームの硬さだ。朝永さんによると「持ち上がるぐらいがいい」という。小さな絞り袋に入れて線を描くが、描くスピードが早いと線が切れてしまう。

体験させてもらった記者も線を描くのはそれほど難なくできたものの、食用色素で色を作る際の配合で苦戦。なかなか思い通りの色にはならなかったが、それぞれのオリジナリティあふれる特別なクッキー缶が完成した。

参加者:ヒナミノさんのクッキーはよく食べるけど作るのは初めてだった。自分が食べるだけでなく誰かにあげたくなる感じ。でも今回はしばらく見つめた後に自分で食べます。
人と人をつなぐクッキーに
朝永さんは企画から販売まで一人で行っているため、売り場に行列ができることも多く焦る気持ちもあるが、朝永さんは商品を渡す時の何気ない会話の時間を大切にしているという。

ヒナミノクッキーkoti 朝永舞子さん:ただ売るだけにしたくない。つながりを持ちたい。ただ売っても面白くない、お話する人がいるから楽しいし、お客さんとの会話から商品につながることもある。普段1人で作業しているのでいろんな発想があって刺激になる。

朝永さんが作るクッキーはプレゼントしたくなるクッキーとも言われる。朝永さんは「もらって美味しかったからと買いに来てくれる人もたくさんいて繋がっているのが嬉しい、クッキーが人と人をつなげてくれる、そういうのが嬉しい」と話している。
朝永さんは3月も長崎市のみらい長崎ココウォークで販売会を予定している。
(テレビ長崎)