トランプ大統領は、自動車を標的にした新たな関税を4月2日ごろに課す考えを表明した。日本も対象になる可能性がある。関税に加えて焦点を定めてきたのが「非関税障壁」だ。
日本の安全基準は「致命的な関税のようなもの」
非関税障壁とは、関税以外の方法で、貿易を制限することにつながる各国のルールのことだ。製品の安全基準や認証のしくみ、輸入数量制限や補助金、付加価値税などの税金、商習慣など、多岐にわたる。
今回、トランプ大統領が指示した「相互関税」の導入に向けた調査では、関税そのものだけでなく、こうした「非関税障壁」も対象となる。
対日調査で照準となる可能性が浮上しているのが、自動車での非関税障壁だ。

トランプ氏は第1次政権時にも、アメリカの自動車メーカーは「最高の環境性能、安全性を備えていたのに、日本での車両検査の後、拒否された」と語り、日本の安全・環境基準を「致命的な関税のようなものだ」と批判していた。
USTR(アメリカ通商代表部)は、貿易障壁をめぐる2024年の報告書で日本を名指しし、アメリカ企業のアクセスを阻むしくみがあると指摘している。
自動車分野では、独自の安全基準や試験が存在するとして、アメリカの安全基準が日本の基準と同等だと認められていないことが非関税障壁にあたると槍玉にあげているほか、電気自動車や燃料電池電気自動車の購入補助金が、ほぼ日本メーカーに向けられ、競争上の優位性をもたらしている、などとしている。

アメリカから日本に輸入される自動車には、現在関税はかかっていないが、日本の車検制度や安全基準、補助金などが「非関税障壁」として問題視され、アメリカに輸出される日本車の関税が引き上げられる可能性に注意が必要な場面になってきた。
「コメの流通は透明性が低い」
USTRの報告書には、日本の農産品をめぐる貿易障壁についての記述もある。

コメの輸入と流通は規制が厳しく、透明性も低いため、アメリカの輸出業者が日本の消費者に意味のある形でアクセスする能力が制限されているとしている。
豚肉については、低価格品の競合を防ぐため、輸入品に段階的に関税を課すしくみが取り入れられていると問題視しているほか、牛肉では、BSE(牛海綿状脳症)リスクのある危険部位の除去基準が国際的なガイドラインやアメリカの規制より厳しいと指摘している。
品目ごとの税率を見るのか、全品目の税率をトータルとして評価するのか、トランプ関税の詳細が不明ななか、農産品の非関税障壁を埋め合わせするため自動車の関税を引き上げるとして、日本側に圧力をかけてくる事態も想定しうる。
自動車は対米輸出の3割
日本からアメリカへの輸出額は2024年に21兆2900億円にのぼり、うち自動車は全体の約3割にあたる。アメリカが日本の自動車にかけている関税は現在2.5%だが、この水準が引き上げられれば、影響は関連する企業に広く及ぶことになる。
トランプ大統領の「相互関税」は、「非関税障壁」も広範に加味したうえで打ち出されることになり、新たな局面に入ることになった。規制や補助金などさまざまな要素を当事国双方が納得できる形で関税に置き換えることは難しい。どの分野が詳しい調査の対象になるのかが大きな焦点になる。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)