公明党が自民党との連立政権離脱を表明した10日夕刻の金融市場は、日経平均先物が大きく下落し、円相場は円高に振れるなど、揺れ動く展開となった。トランプ大統領による対中100%関税の表明で、投資家のリスク回避姿勢は一段と強まりつつある。
政策の停滞に強まる警戒感
自民・公明の党首会談が始まった10日午後、連立の行方に警戒感が広がりつつあるなか、

日経平均株価は一時、600円を超えて値下がりし、終値は前日に比べ491円64銭安い4万8088円80銭となった。

午後3時半をまわり、公明党の連立離脱方針が報じられると、大阪取引所の日経平均先物は、4万7000円台半ばまで落ち込んだ。外国為替市場の円相場は一時1ドル=152円30銭台まで上昇し、離脱が伝わる直前のレートと比べ40銭ほど円高に振れた。
高市氏の自民党総裁就任を受け、今週の市場は、財政拡張的な政策がとられることによる景気刺激への期待を背景に、「高市トレード」による株高円安が進んできた。日経平均は総裁選前から9日まで2800円を超えて上昇、円相場は1ドル=153円を突破する場面もあったが、公明党の連立離脱により、一転して今後の方向感が見出しにくくなった。

政権の枠組みが固まらなければ、政策の停滞は長引くことになる。高市氏が真っ先に注力するとしていた物価高対策は、早期策定のめどが立たなくなった。政権発足後、財源をめぐる野党との調整などにすぐに着手すると見られていたガソリン税や軽油引取税の暫定税率の廃止をはじめ、自治体向けの重点支援交付金の拡充など、国民生活に影響する施策の実現が見通せなくなった。
高齢化に対応するための社会保障改革をめぐる道筋も不透明になってきた。政府は、患者の医療費負担を一定に抑える高額療養費制度について、秋までに新たな方針を決めるとしてきたが、改革を進めるハードルは上がった。
トランプ対中関税も冷や水
政権運営の難しさが増すことへの懸念が強まるなか、緩和的な財政・金融政策がとられることによる景気浮揚効果を期待して、急進行してきた株高・円安局面が逆回転するかが、この先の金融市場の焦点となる。

アメリカのトランプ大統領が表明した、中国に対する100%の追加関税も株価の押し下げ要因だ。トランプ氏は、中国が9日に発表したレアアース関連の新たな輸出規制について「陰湿で敵対的な動きだ」と批判し、11月1日から中国からの輸入品の関税率に上乗せするとしていて、米中貿易摩擦が再燃し、世界経済に悪影響を及ぼすことへの警戒感が広がっている。11日のニューヨーク市場は、IT・ハイテク関連銘柄など景気敏感株を中心に売りが拡大し、ダウ平均は800ドルを超えて値下がりし、約半年ぶりの下げ幅を記録した。
政策スピード低下のリスク
11日の大阪取引所の日経平均先物の終値も、4万5200円台まで値下がりし、10日の日経平均株価の終値と比べて3000円近く安い水準となった。

投資家のリスク回避姿勢が強まるなか、10日のニューヨーク外国為替市場の円相場は一時、1ドル=151円10銭台まで上昇し、10日の東京市場の午後5時時点と比べて2円近い円高水準をつけている。

高市氏の国会での首相指名をめぐる不透明感が強まり、政策の実行スピードが低下するリスクがくすぶるなか、米中の貿易戦争再発をめぐる懸念も広がってきた。
急ピッチで進んできた「高市トレード」は巻き戻されることになるのか。連休明けの東京市場は、大荒れの展開も予想される。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)