自分の子どもと同年代の子どもの発達を比べて、「あれができない」「これができない」などと悲観してしまうことがあるだろう。
そんな親が子どもに対して「困っている」ことは、子ども自身も「困っている」。そう考えるのは、発達障がい専門の運動療育に携わり、運動教室「LUMO」を運営する松本哲さん。
松本さんは本間龍介医師監修の独自プログラムのもと、発達障がいやグレーゾーンの子どもが運動を通して改善していくことを目指している。
『発達障がい&グレーゾーン 楽しく遊びながら子どもの「発達」を引き出す本』(青春出版社)から、「友だちに注意をして回ってしまう」という息子の行動に悩んでいた母親のエピソードを一部抜粋・再編集して紹介する。
子どもも困っている!
「すぐに癇癪を起こす」「落ち着きがなく座っていられない」「怖がりで一人でトイレやお風呂に入れない」「人見知りが強い」「こだわりが強い」「滑舌が悪い」「動きがぎこちない」「偏食が多い」などなど。
これらは、まわりから見ると問題行動であり、困った癖です。
そのため、教室を訪ねてくるお母さん、お父さんの多くは、そんな子どもに対して、「困っています」と言います。いままでずっと頑張ってわが子に寄り添い続けてきました。その気持ちもとてもよくわかります。

でも、その困りごと、実はいちばん困っているのは子どもなのです。
お兄ちゃんと弟のいわゆるグレーゾーンのきょうだいを連れて、見学に来られたお母さんがいました。自分ルールがあり、幼稚園でも小学校でも、友だちに注意をして回ってしまう、と悩んでいました。
公的機関にも相談しましたが、「まだ小さいですし、暴れるわけでもないから様子を見ていればいいんじゃないですか」というようなことを言われ、ずっとモヤモヤした気持ちで過ごしていたそうです。
それでも幼稚園や小学校では注意ばかりされています。