中学校の部活動を地域のクラブチームなどに移行する”部活動の地域移行”が全国的に進められている。少子化や教職員の働き方改革が進む中、静岡市では2027年度の移行に向けて体験会や実証実験から得た課題の検討を進めている。中学校の部活動はどう変わるのだろうか?
実証実験で見えたメリットや可能性

1月24日に放課後の体育館で行われていたのは部活動ではなく学校の枠組みを超えた「地域クラブの活動」の実証実験だ。
中学生たちがラグビーによく似た”インドアフットボール”を体験していた。

指導にあたっているラグビー元日本代表の小野澤宏時さんは「ディフェンスの目線切ったらどうする?もしかしたらパスするかもしれないし、こっち走るかもしれない。そうしたらこの瞬間きれるよ」と生徒たちに具体的なアドバイスをしながら練習を進める。
従来の学校の部活動では中学校の教員が指導するケースがほとんどだったが、一流の指導者から教わることができるのも地域クラブのメリットだ。

参加した1年生の生徒は「インドアフットボールって不思議な名前で、おもしろそうだったので来ました。貴重な体験だと思う。すごく楽しくて面白い」と話し、2年生の生徒は「ハイレベルな指導を受けさせてもらって、自分たちで考えて実際にどうやったら相手を上回れるか自分たちで考えられることが良い」と自主性を伸ばすことに積極的な様子が見られた。
国が主導となり、中学校の部活動を学校単位から地域での活動に変えようとする「部活動の地域移行」は現在、全国的に進められている。

その理由の1つが少子化による影響で、静岡市では2016年度には約490あった部活動が2024年度は420にまで減少。8年間で70もの部活が廃止となってしまった。
大会が開催されても、部員不足が原因で1つの中学校が単独で大会に出られない場合もあるという。

インドアフットボールは静岡市では部活動としては存在しない競技だが、こうしたマイナー競技の地域クラブがあれば子供たちは選択肢が増え可能性が広がる。
行政の方針と今後の課題は?

行政も子供たちにとっての最適な地域クラブの運営について検討を重ねていて、1月24日の定例会見で「子供たちがこれまでもこれからもスポーツ・文化・芸術活動を身近に親しむことができる機会を確保するために、学校の部活動に代わる新たな活動の場”地域クラブ”を設置して、市民や民間企業団体等地域社会の力と一緒になって実施していきたい」と述べた静岡市の難波喬司 市長。
2027年度に静岡市の中学校のすべての部活動を廃止し、地域クラブでの活動へと移行する方針を固めた。
課題としては「どのような地域クラブに?」「生徒たちの費用負担は?」「指導者の確保は?」など、検討すべきことは少なくないが完全移行に向けて体制を整えていく方針だという。
地域で子供たちを育んでいく仕組み作りのきっかけに
実証実験の体験会を担当した静岡エスアカデミア・スポーツクラブも実証実験を通して明確になった課題の解決策を模索している。

山崎俊昌 代表理事は「13歳になった中学生がいろいろなことを選択できる場所を作っていかなければいけない。まずは施設をどう確保していくか、それからファイナンスの部分で教えるコーチの質を担保するためにどうしていくか。地域の大人たちが地域の子どもたちに関わるという意味で、地域で子供たちを育んでいく仕組み作りのきっかけになるのでは。そういったところは期待している」と語る。

子供たちの貴重な経験の場となる部活動の地域移行を、少子化や働き方改革などの時代の変化に合わせて行政側と地域が協力して作ることが求められている。
(テレビ静岡)