オリンピックなどで活躍する多くのアスリートも出場経験があるであろう中学生のスポーツ競技会「全国中学校体育大会」。この大会で水泳やハンドボールなど9つの競技が3年後から実施されなくなるという。なぜなくなってしまうのか?
9競技が3年後から全国大会廃止へ
この記事の画像(11枚)この日、静岡市清水区では中学生活で最も大きな大会、全国中学校体育大会、通称“全中”への出場をかけハンドボールの県大会が行われていた。
中学最後の大会となる3年生は「絶対きょうは勝つという思いでやりました。県大会優勝に一歩近づけたのでうれしい」と話してくれた。
選手たちが目標に掲げる“全中”は現在、陸上やサッカー、 ソフトテニスなど20競技が実施されている。
しかし、この“全中”の規模を日本中学校体育連盟は縮小すると発表した。
3年後の2027年度以降、水泳や相撲、そしてハンドボールなど9つの競技で大会が廃止となるという。
“全中”での活躍は強豪校への進学の道が開ける舞台でもあるため、廃止となるハンドボール部員たちは寂しさを口にした。
3年生の部員は「全国大会はすごく夢のような存在。中学で3年間がんばってきた部活のハンドボールがなくなってしまうのはすごく寂しい」と話す。
また別の部員は「目標がなくなることはとても寂しいことだけど、ハンドボールが上達することは楽しいことなので(後輩たちは)楽しんで練習してほしい」と後輩にエールを贈った。
廃止が決まった競技の選手たちは
静岡県焼津市にある「やいづ相撲クラブ」。こちらのクラブには小学生から大人まで37人が所属している。
このうち中学生は7人。夢の舞台である全中出場に向け稽古を重ねている。
中学2年の部員は「来年の中体連で(勝って)全中に行きたいというのがまず一番の目標です」と話してくれた。
相撲クラブの中学生が目指す全中だが、相撲もまた3年後から全中で実施されなくなる。
そのため選手からは落胆の声が聞かれた。
中学2年の部員は「目標が1つ減ってしまうのでとても悲しく思う。競技人口が少ないのでしょうがないけれど、残しておいてほしかったな」と率直な思いを述べた。
また、中学1年の部員は「僕は3年生の時に最後の年で出られるけれど、僕より下の子たちは出られないのでかわいそうだな」と話す。
廃止の狙いは教師の負担軽減で、クラブの指導者も理解は示すものの目標が無くなってしまうことへの懸念を口にした。
やいづ相撲クラブ指導者
松浦みな美さん(中学校教師):
中体連の運営は中学校の先生だけでやるのは厳しくなってきているとは思うが、中体連の全国大会は大舞台でそこを目指して頑張りたいという子もいるので、自分たち指導者がその子たちが頑張れる舞台を用意できたらいい
関係者から戸惑いや批判も
一方、廃止が決まった水泳をめぐっては日本水泳連盟が「今回の急な方針発表のタイミングには唐突感を持ちながら対応しているところです」と戸惑いをにじませる声明を発表した。
また教育評論家の尾木直樹さんも進め方に疑問を呈した。
教育評論家・尾木直樹さん:
子どもたちの夢や目標をいきなり大人がばっと足蹴にして、強引で乱暴すぎる。代案を出さないとダメですね
教師の負担軽減などが背景に
なぜ規模縮小する必要があるのか?
日本中学校体育連盟は「部活動の設置率が20%未満だった競技」を対象としたとし、理由として少子化への対応や教師の負担軽減を挙げている。
この動きを、名古屋大学の内田良 教授は「大きな一歩」だと評価している。
名古屋大学・内田良 教授:
(部活動の顧問の教員は)土日に出勤しなければいけない。ほとんど残業代のつかない、手当がつかない状況でやっている。全国大会のあり方を変えない限りは教員の働き方から部活動の在り方は変わらない。大きな一歩を踏み出した
生徒たちからは落胆の声が聞かれる中、教師の立場からは「大きな一歩」との評価の声もある。子供の夢や目標が失われないよう社会全体で考えていく必要があるのではないだろうか。
(テレビ静岡)