熊本の嘉島町立嘉島中学校3年の内田椛さん(15)。2024年12月に『大切なひとを笑顔にするごはん』をテーマにした、ジュニア料理選手権に出場した。母のために作ると意気込む15歳の挑戦を追った。

内田椛さん 15歳の挑戦の記録

全国の中学生と高校生を対象にした『ジュニア料理選手権』。2024年12月1日、神奈川県川崎市で開催された。

この記事の画像(22枚)

味の素とオレンジページが共同で開催する国内最大級の創作料理コンテストで、12回目の今回は1万6558組が応募。書類選考やオンライン審査を経て、この日、本選である最終調理審査に進んだ団体6組と個人6人が腕をふるう。

熊本の嘉島町立嘉島中学校3年の内田椛さん。中学生の部・個人部門で競う3人のうちのひとり。椛さんは「3人の中のてっぺんを目指したいと思います」と話した。

椛さんを見守る兄・築さんと母・裕美さん、そして祖母の美喜子さん。母・裕美さんは「練習もたくさんやって、ちょっと失敗したりして涙を流すこともあったので、それでも頑張って一生懸命やっているので、すごく応援したいなと思っています」と話した。

椛さんの料理のきっかけは母・裕美さん

『ジュニア料理選手権』を1週間後に控えた2024年11月にリブワーク藤崎台球場に椛さんの姿があった。中学時代最後の大会に嘉島中野球部は、御船中と蘇陽中との合同チームで出場した。

母・裕美さんはソフトボールのチームに所属している。その影響で椛さんも野球を始めた。女手ひとつで椛さんと兄・築さんを育てるお母さんの手伝いをしていくうちに、椛さんは料理が好きになったという。椛さんは「(裕美さんは)人一倍頑張る人です。とても家族思いなところが好きです」と話す。

母・裕美さんは「今は(制限時間の)1時間で料理を作る練習をしています。(見ていると)自分で作る方が楽だなと思いながら…作ったものを(知り合いに)試食してもらっています」と話した。

「大人になったらお母さんのチームに入って一緒にプレーしたい」と椛さんは考えている。

『ナンちゃってスポ根バーガー』

椛さんは『ジュニア料理選手権』に中学1年のときから毎年参加している。3回目にして初めて最終調理審査に進んだ。

今回、椛さんが作るのは母・裕美さんの好物である『ナン』と『からしれんこん』を使ったオリジナルレシピのハンバーガー。

レタスの上におから入りのつくねのハンバーグ。そこにカレーソースをかけ、からしれんこんを載せてナンで挟む。レンコンチップスを添えて、出来上がりだ。

名付けて『ナンちゃってスポ根バーガー』。学級担任の末竹美歩先生は「とても手際が良くて、10分余った状態で仕上がっていたので、練習をしっかりしたかいがあるんじゃないかな」と出来を評価。

技術・家庭科担任の野田大介先生も「ナンというと、ちぎって(ソースを)つけて食べる。それをかぶりつくだけで味わえる。そこがまず食べやすくていいなと。おなかにはたまる。『スポ根バーガー』というだけはある」と太鼓判を押した。

椛さんに「お母さんは厳しいか」と聞いてみると、「厳しいです。小さい頃は保育園とか小学校のお弁当が必要なときは、必ずお兄ちゃんと一緒にお母さんに教えてもらいながら作っていました」と話す。

母・裕美さんは「食べることはずっとしていくことだし、男の子でも女の子でも料理はできた方がいいので、『料理は楽しく』がモットーなので、楽しくやってくれたらなと。小さいときから『一緒にゆやろうか』と」話し、あとは本番を待つばかりだ。

『大切なひとを笑顔にするごはん』

『ジュニア料理選手権』、最終調理審査。本選に進出した団体、個人はそれぞれ『大切なひとを笑顔にするごはん』のレシピ、そして、そこに込めた思いを発表し、制限時間1時間の調理に入る。

椛さんは「私たちのために家事や送迎、部活の応援など、いつも全力投球で頑張ってくれている母に、これからも笑顔で頑張ってもらいたい。そして、私が大人になったら、母の所属しているソフトボールチームで一緒にプレーするという2人の夢をかなえるために、母が毎日パワフルでいられる料理を食べてもらいたいと思い、『ナンちゃってスポ根バーガーを作りました。普段から仕事やソフトボールで疲れている母に、からしれんこんパワーで元気になってもらいたいと思いました」とプレゼンし、調理に入った。

審査員の一人、タレントのこがけんさんに、調理の様子の感想を聞いてみると「全部気になりますよ、どういう味なのか。カレー味でつくねもすごくフワフワでチーズもかかっていて、熊本の郷土料理のからしれこんとナンとカレーが、どんなふうなミラクルを起こすのか、気になります」と話した。

母・裕美さんは椛さんの調理を見守りながら「こっちしながらあっちみたいな。3種類ぐらいいっぺんにやるから、そこだけだったです、心配は」と話した。また、祖母・美喜子さんは「私は初めて(調理を)見るんです。食べたんですけど、初めて見るから。(母親が)スパルタで練習させたみたいで、ちょっと心配していたんです」と話した。

『元気の素』がたくさん詰まった作品

椛さんはプレゼンで「バーガーを食べた母は、とても笑顔で喜んでくれて、そんな母を見て、私も心から幸せな気持ちになりました。今回試食してくれたみんなからも、たくさんの笑顔をもらうことができ、私もたくさんの元気をもらってきました。皆さんにも『元気の素』がたくさん詰まった『ナンちゃってスポ根バーガー』を食べて笑顔になってもらいたいです」と話した。

調理が終わると。審査員が試食をして、グランプリを決める。試食を終えてこがけんさんは「全部うまいもんな、本当に」と審査に頭を悩ませていた。

結果発表で、中学生の部・個人部門のグランプリは宮城県の藤浦小花さんに決まり、残念ながら椛さんはグランプリを逃した。椛さんの『ジュニア料理選手権』は終わった。

大会が終わって椛さんは涙をぬぐいながら「うまくできるか、ちょっと不安だったんですけど。練習よりもうまく作れたのでよかったです。たくさんサポートしてくれたり、応援してくれて、ありがとうございました」と話した。

また、母・裕美さんは「調理しているところをずっと見てたんですけど、楽しそうにやっていて、もう私はそれで『満足だな』と思いました。日頃、私も忙しかったり、なかなか構ってあげることができなかったりするんですけど、時間がない中でも一緒にできることはやりたいなと思って、今まで自分がやってきたのは間違ってなかったなと思って。『私のために』って作ってくれたのはすごくうれしかったです」と話した。

また、「大人になって一緒にチームでやれるまで元気で鍛えておこうかなと思います。また多分、『スポ根バーガー』を作ってくれると思うので、それを食べて、元気でいたいと思います」と思いを語った。

これからの長い人生でうまくいかないことや失敗することが何度もあるだろう。でも、あの時に流した涙といつも全力投球のお母さんのために作った料理の味の記憶がきっと自分を支えてくれるだろう。

(テレビ熊本)

テレビ熊本
テレビ熊本

熊本の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。