和式トイレに行けない子供たちが増えている。そんな状況を知った大分県大分市の男性が1月、学校のトイレの「洋式化」の改修費用に充ててもらいたいと、大分市に1000万円を寄付した。家庭や商業施設では当たり前に見かけるようになった洋式トイレ。しかし大分市立の小中学校では約5割がまだ和式トイレのままである。なぜ学校のトイレの洋式化は進んでいないのか。背景などを取材した。

洋式に行きたい子が多く トイレを我慢する子供たち

大分市に寄付金を贈ったのは、市内在住の玉井浩一さん。その金額はなんと1000万円だ。
今回の寄付のきっかけは、小学校3年生の娘から聞いた“学校のトイレ事情”だった。

1000万円の寄付をした玉井浩一さん(中央)
1000万円の寄付をした玉井浩一さん(中央)
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「洋式に行きたい子が多いので、トイレに並ぶが、次の授業に間に合わないので、トイレを我慢したりとか、そういうことがあるという話を初めて僕も知った」と語る玉井さん。

学校のトイレは「古い」「暗い」といったイメージも

市の教育委員会によると、大分市内の小・中学校のトイレの洋式化率は2024年9月時点で57.8%、全国平均の68.3%や大分県の平均64.2%を下回っている。2024年度中に6割に到達する見込みだという。大分市は小中学校の数が多く、トイレの数も5500基以上と他の市町村に比べて多いため、洋式化率が低くなってしまうという事情も。

しかし、各家庭では洋式トイレが普及している。そのため小学校低学年を中心に和式に慣れていない子供も多く、「トイレが古い」「暗く感じる」などといった印象を持っていて、なかには「家に帰るまで我慢している」という声もあるという。

こうした子供たちの思いを初めて知った玉井さんは改修費用に充ててもらいたいと今回市に1000万円の寄付を行った。目録を受け取った足立市長は「これを機にトイレの洋式化を一気に進めていきたい」と感謝を述べていて、市は今後10年をめどに市内の小中学校のトイレの8割を洋式にしたいとしている。ちなみに各学校では教師用やプール、体育館などは100%洋式化を目指しているが、子供たちについては衛生上の理由から洋式の便座に座りたくないという声もあることから、各トイレ内に複数の個室がある場合は和式を1基残す方針にしているという。

洋式化には1基につき100万円前後の費用 配管やドアの工事も必要

一方で、すぐに洋式化できない事情としては、改修費用の問題などがある。市教委によると、トイレ1基を洋式に変えるのに、約100万円ほどの費用がかかるという。
配管の位置を変える必要や、天井の張替え、トイレのドアを内開きから外開きに変えなくてはならないなど、作業が多くその分費用もかかる。
さらに工事に長い期間を要するため、子供たちのトイレを確保しながら進めるには、一度に変えるのは難しく数基ずつ行わなければならないというのが現状だ。

現在は夏休みなどを利用して、授業などの邪魔にならないように洋式化率が年間1%ずつ増えるよう工事を進めているという。

多額の善意を贈ることを決めた玉井さんは「衛生面・健康面に留意してもらえるような形になればいいなと思っている」と話している。
長い時間を学校で過ごす子供たちが快適にトイレを使えるように、対応の加速が求められる。

(テレビ大分)

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