29日で発生から3年を迎えた大分県別府市のひき逃げ事件について。これまでの動きを振り返るとともに、殺人罪を立証するために何が重要となるのか専門家に聞いた。

警察は3年間でのべ4万6000人の捜査員を投入、現在の風貌を想像して描いた似顔絵を公開
3年前、別府市野口原で起きたひき逃げ事件。バイクに乗っていた男子大学生2人が車に追突され死傷した。
事件から約1年後、警察は現場から逃走した八田與一容疑者を道路交通法違反ひき逃げの疑いで初めて全国の警察を挙げて捜査する重要指名手配に指定。
警察はこの3年間でのべ約4万6000人の捜査員を投入。
八田容疑者の現在の風貌を想像して描いた似顔絵を公開するなどして情報提供を呼びかけた。

情報提供件数は1万件を超えるも、事件解決には至っていない
全国から寄せられた情報はこれまでに1万件を超え、警察は防犯カメラの解析や県の内外で聞き込みなどを続けているが、事件解決には至っていない。
遺族は殺人容疑などの適用を求めてこれまでに約8万人の署名を警察に提出。
そして八田容疑者を殺人と殺人未遂の容疑で刑事告訴した。
ーー亡くなった大学生の父親(2023年9月)
「容疑者の逮捕が無い限りはわたしの気持ちも全然落ち着きませんし、今後一層大分県警には頑張って欲しいなという気持ちでいっぱい」
事件から6月で3年となる中、大きな動きが。
県警が新たに容疑に殺人と殺人未遂を追加し別府ひき逃げ事件は時効の無い殺人事件として捜査されることになった。

殺人罪立証には八田容疑者に殺意があったことを証明する必要がある
殺人容疑が追加された2日後。
県警の捜査員が訪ねたのは八田容疑者の母親が住む家。
殺人容疑に変更した経緯などを直接説明したとみられる。
殺人罪を立証するには偶然起きた交通事故ではなく八田容疑者に殺意があったことを証明する必要がある。
警察は「殺人の故意を立証する証拠を得られた」と説明していますが具体的な証拠は明らかにしていない。
捜査関係者によると、現場にはブレーキ痕が無く、八田容疑者の車は時速100キロ近く出ていたことが分かっている。
警察は当時の速度について調べるため、レース場である日田市のオートポリスで走行実験を行った。こうした捜査を積み重ね容疑追加の判断に至ったとみられる。

専門家は2人を狙ってこの道を選んだと言えるかが殺意の認定には重要だという
殺人容疑を追加した警察の判断について、宮城県警の元白バイ隊員で全国の交通事故を鑑定している専門家、佐々木尋貴さんは次のように話す。
「過失で捜査したものを故意犯の殺人に切り替えるというのは非常に捜査機関とすれば勇気がいること。限られた人数の中で適正な捜査を遂げていく上ではこれくらい (3年)かかってもやむを得なかったのかなという気持ちはする」
八田容疑者は事件当日現場近くの商業施設で被害者とトラブルになった。その約5分後に数百メートル離れた交差点で事件を起こしたことが分かっている。
トラブルのあと大学生2人は商業施設を出発。
その後、八田容疑者の車も動き出す。八田容疑者は2人のバイクと同じ道を走り事件を起こしているが、専門家は2人を狙ってこの道を選んだと言えるかが殺意の認定には重要だと話す。
「トラブルがあった商業施設の2人を特定して殺そうとしたものなのか、あるいはトラブルによってかんしゃくを起こしてしまって、もう誰でもいいからとにかく停まっている人を狙って、テロ的に殺害してやろうという殺意なのか、非常に警察としても考えたと思う。(トラブルから事故まで)時間的に離れてしまうと果たして2人がトラブルになった2人かを八田容疑者が理解出来ていたか非常に捜査の中では重要になってくる」

専門家「感情を制御できずかんしゃくを起こしたか」
また、専門家は八田容疑者の車のフロントガラスが正面から割れていることに注目しているという。
「あれだけ衝突した後までエネルギーが消費されるくらい車が壊れるというのは、ほとんどブレーキをかけてないと思う。一時の抑圧された感情を爆発させる術をコントロールできなくなって、怒りをコントロールすることができなくなってのかんしゃくを起こした殺害方法ということが言えるのではないか」
ひき逃げの時効は7年。しかし殺人には時効はない。事件から3年、新たな展開を迎えた別府市のひき逃げ事件。
八田與一容疑者はどこにいるのか殺人事件として時効の無い捜査が進められている。
