寒い冬の季節、乾燥対策として多くの人が「欠かせない」という加湿器。しかし、知らないうちに恐ろしい病気「加湿器肺」にかかるリスクがある。中には死に至るケースもあり、注意が必要だ。その落とし穴とは?

「加湿器肺」とは?死に至ることも

加湿器肺とは、文字通り加湿器が原因で起こる肺炎のこと。一体どんな病気なのか?「加湿器肺とは、加湿器のタンクの中の水中で、カビや細菌などの微生物が繁殖し、それが室内に広がり、広がった菌を吸い込むことによって起こる『アレルギー性肺炎』」と解説するのは、福岡青洲会病院の杉本幸弘呼吸器センター長だ。

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つまり風邪予防など、喉に良いと思って使用している加湿器の蒸気が原因で起こる肺炎のこと。症状は、『痰の絡まない乾いた咳や発熱』などで、一見、風邪と似ているが、風邪薬や抗菌薬では、あまり効果がみられないのが特徴だ。

「薄いふわっとしたポツポツした影が炎症所見です。基本はカビですね」と実際に加湿器肺炎にかかった患者のCT画像を前に解説する杉本医師。

肺全体に白い影、カビが広がっていて、正常な肺と比べても違いは一目瞭然だ。重症化すると呼吸困難で入院するケースもあり、大分県では過去に加湿器肺炎で死亡する事故も起きているという。

更に、「重症化すると呼吸不全が出てくるので、酸素投与をしないといけないようになる。あるいは、ステロイドという治療をしていかないと症状は改善しない」と杉本医師は付け加えた。

加湿器の水は「水道水」で毎日交換

では、加湿器肺炎は、どうすれば予防できるのか。加湿器を扱うメーカー「ダイニチ工業」の宮崎航大さんに話を聞くと、「定期的なメンテナンスと、毎日の水の交換が重要」と即答した。まずは清潔な水に保つことが大切で、タンクに水を継ぎ足すのは“御法度”とのこと。

特に使用する水の種類が重要で、使っていいのは、「水道水」だけ。水道水には微量の塩素が含まれていて、塩素には殺菌効果があり、雑菌の繁殖を抑える事ができるのだという。

ミネラルウォーターや1度沸騰させた水、そして浄水器の水もNGだ。タンクに入れた水道水も半日ほどで塩素が抜け、菌が繁殖しやすい状態になるため、前日に使っていた水が残っていても、継ぎ足さず新しい水を入れ替えることが重要だと宮崎さんは、注意を促す。

月に1度は「クエン酸」で滅菌を

また、加湿器のタンクなどは定期的な手入れが必要だが、方法はいたって簡単。まず、タンクは、きれいな水道水を3分の1くらい入れて蓋を閉め、何度か振って内部全体を水で洗えればOK。トレーや加湿フィルターも、すすぎ洗いをするだけで菌の繁殖が格段に減るという。宮崎さんによると、「通常は、2週間に1度を目安に手入れをすれば、1分から2分、しっかりとすすげば、汚れもしっかり落ちる」という。

最も菌が繁殖しやすい『加湿フィルター』については、クエン酸を使った洗浄がより効果的。「月に1回、100円ショップなどに売っている容器に37~38℃のぬるま湯を入れ、フィルターを浸ける。

クエン酸は、水1リットルに小さじ1杯ちょっと。30分ほど放置して水道水で洗い流せば完了だ。

インフルエンザなど風邪が流行るこの季節、暖房と共に加湿器を使用する場合は、毎日の水の交換と定期的な洗浄で、菌の繁殖を予防することが重要だ。

(テレビ西日本)

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