諫早市にある諫早神社では福を呼び込む「お多福面」があり、大きく開いた口をくぐりぬけるとご利益があるとされる。その大きさは「日本一」。「日本一の福」を招く神社は、九州を守る守り神を祀る由緒ある場所だ。
日本一の福を呼び込む「開運 お多福くぐり」
長崎県諫早市にある「諫早神社」に設置されているのは、鳥居よりも大きく、福を呼び込む「お多福面」だ。

縦・横5.4mの大きさは「日本一」だ。大きな口をくぐりぬけると、家内安全や健康長寿、商売繁盛などのご利益があるとされる。

毎年、節分にあわせてお目見えし、2025年は2月11日まで設置される。神社近くの商店街と地域活性化を目的に始め、ミニお多福からスタート。せっかくなら「日本一の大きさのお多福面」を目指そうと2020年、福岡市の櫛田神社にある縦5.3m、横5mを超える大きさのお多福面を納めた。

「日本一の福を呼び込める」とあって、遠方からも「お多福くぐり」で開運を祈願する人が訪れている。
「神社(ジンジャー)グッズ」あります
日本一のお多福をくぐって、境内に足を踏み入れてみた。

おみくじの種類が豊富で、ずらりと並ぶ。

御朱印は季節ごとに変わる。お多福の御朱印も販売されている。

オリジナルグッズもある。「神社(ジンジャー)エール」「神社(ジンジャー)おこし」「神社(ジンジャー)飴」。「神社(ジンジャー)」と「生姜」をかけたネーミングで、もちろん生姜が入っている。長崎は日本における生姜発祥の地。地元産の生姜を神様にお供えしていて、神のご加護を授かろうというわけだ。
SNSの発信に力を入れ、インスタグラムはほぼ毎日更新。投稿しているのは宮本健一宮司だ。

諫早神社のキャッチフレーズは「神社だから、できること」を掲げている。宮本宮司は仕事を辞めて2009年に諫早神社に入った。諫早神社としては約90年ぶりに常駐の神職の就任となった。宮本宮司はこれまでの神社の在り方に疑問を抱いていた。

「神社は身近な場所だが、歴史を重んじて守る、“形を継承する”イメージ。形の根本にはその形を思う“願い”や“心”があったはず。その“心の部分”が置き忘れられているのではないか。日本文化に内包されている自然全体に神様がいて、それが神社。多くの人が心でつながる場所になれば、人が人として豊かに暮らすことができるのではないか」。そんな思いを抱き「人が集まる神社」を目指すことを決めた。
九州を守る神社は いわば「パワースポット」
諫早神社の誕生は728年。2025年で創建1297年を迎える神社だ。奈良時代、聖武天皇が九州全体を守護する「四面宮(しめんぐう)」という神社を建てるよう、高僧・行基に命じたとされている。明治初期、政府が神仏分離令を発令し、四面宮は「諫早神社」へと神社名が変わり、いまに至る。

歴史がある分、見どころも多く、バスツアーで観光客が訪れるほどの人気の神社だ。ご神木となるクスノキは樹齢が1200年を超える。

参道右手には「御神苑(ごしんえん)」とよばれる神々を感じる「庭」がある。目を引くのが真っ白な鳥居。しかも柱が3本だ。

陶器でできた「白い陶器の三柱鳥居」だ。100年前にあった全国でも稀な「陶器製の鳥居」が諫早大水害で流失。数十年の時を経て復活した。陶器の製作は長崎の「波佐見」の窯で2年の歳月をかけて完成。3本柱は「くぐる」ためではなく「護る」ため。護っているのは「要石(かなめいし)」だ。
「要石」は「鯨石」と呼ばれ、天気を司る鯨が海面からまさに上がってきている姿に見立てている。噴火で誕生した平成新山の石を使用し、雲仙のご利益が世界に広がっていく様子を表している。
鳥居がある場所は「雲仙塚」を再現している。諫早神社のご神体そのものと言われる「雲仙」の山景をそのままの形でかたどり、高さ約3mの山で表現している。庭石は平成新山や雲仙地獄にあった石を使い、雲仙のエネルギーが詰まったいわば「パワースポット」だ。

雲仙塚の下には「龍心池(りゅうしんいけ)」が広がる。この池は江戸時代につくられた「県内三大名庭」で水害で消失したが、今回よみがえった。それぞれの石にはいわれがある。

神社のことを知ってほしいと、わかりやすい案内板が複数ある。QRコードからスマートフォンで見ることもできる。

神社の歴史を書いたパンフレットも充実。地元ながら知らないことがたくさんあり、「知ることは楽しい」と、改めて長崎の歴史の奥深さに触れることができる。
建国記念の日に「おむすび」でお祝いを
宮本宮司の挑戦はこれだけにとどまらない。2024年には「演劇」を作った。

「九州の守り神が元寇襲来時に日本を守った」という神話を原作にしたものだ。地域の新たな価値を創出するコンテンツとして、全国の神社ではただ一つ、観光庁の事業に採択された。2025年はインバウンドで長崎を訪れる外国人観光客に、日本の文化を触れてもらう機会を諫早神社で作り出したいとしている。

節分が終わると2月11日は「建国記念の日」だが、みんなで「日本の誕生日」を祝うイベントも企画している。日本は2025年で誕生から2685年を迎える。当日は「生姜入りのおむすび」を211個用意している。宮本宮司は「建国記念の日は様々な考え方があるが、まずはひとつの国がこれだけの年月を重ねてこれたことを純粋にみんなでお祝いしたい。日々の生活はそんな平和があってこそ」と話す。

日本の年齢とメッセージを書いて持って来てもらうことが条件で、引き換えにおむすびをゲットできる。

宮本宮司は「神社の可能性はまだまだ広がる」と感じている。日本一の福を招く「開運 お多福くぐり」は2月11日まで行われ、節分を過ぎ、春を迎えて福にあやかりたい人たちが集まってくる。
(テレビ長崎)