熊本・菊池市北部の小さな集落に江戸時代から伝わる正月行事『穴川夜神楽(あながわよかぐら)』が、1月5日に奉納された。御利益があるといわれる『御幣(ごへい)』をめぐり、ことしも鬼神と見物人による激しい攻防が繰り広げられた。
集落で300年以上続く『穴川夜神楽』
熊本・菊池市の北部、大分県との県境近くにある穴川(あながわ)地区。20軒ほどが暮らす山あいの小さな集落に300年以上前、江戸時代から伝わる正月行事がある。

菊池市無形民俗文化財の『穴川夜神楽(あながわよかぐら)』は、毎年1月5日に五穀豊穣や無病息災を願って集落内の菅原神社で奉納されている。

保存会の緒方元一会長は「先人から引き継いできた祭りを、若い人も少ないので、どうやってつなげていくかが一番の課題。この祭りだけはどうにかして伝えていかなければならない」と、祭りの継承について語った。

1月5日夜、拝殿では地元の住民や集落の出身者でつくる保存会のメンバーが、紺の狩衣をまとって、全部で10の舞を奉納した。

8年前、保存会に入った大学3年生の緒方卓己さん。この日は大学がある沖縄から帰省し、舞い手を務め「年々、年齢層も上がっていく中で、携わっている者として守っていきたい。これから先、自分がどんどん中核になっていくと思うので、いい感じにしていけたら」と話す。

そして、最後の舞。恐ろしい形相をした鬼神が姿を現すと、境内の雰囲気が一変。夜神楽はクライマックスを迎える。
『御幣』をめぐる鬼神と見物人の攻防
鬼神が持つ竹の先につけられた『御幣(ごへい)』には無病息災の御利益があるといわれ、それを手に入れようとする見物人との間で、激しい攻防が繰り広げられる。

『御幣』を奪おうと必死に手を伸ばす見物人に対し、鬼神は、竹を振り回し強烈な一撃を見舞う。祭りに参加した見物人は「とても痛かったけど…、ことし一年、病気しないように頑張りたい」と話した。

また、見物人の子どもは「とても迫力があって怖かったけど楽しかった」と話し、保存会の緒方卓己さんも「毎年、夜神楽をしたら『正月が終わって今年が始まる』という感じ」と話した。

厳かな舞と鬼神との激しい攻防で一年の無病息災を願う山里の夜神楽。これからも里人の手で守り継がれていく。
(テレビ熊本)