いま熊本県球磨郡にある水上村が全国から注目されている。きっかけは青山学院大学の箱根駅伝連覇。山間にある小さな村と青学が共同で進める陸上イノベーションの反響や効果を取材した。
コンビニ1軒もない小さな村・水上村
正月の箱根駅伝で連覇を達成した青山学院大学。今、ユニフォームに刻まれたある文字が全国的に注目されています。それは胸元にある『水上村』と書かれたロゴ。

全国の駅伝ファンからは「水上村って、どこなんだ?群馬の水上町じゃないよね」や「妙高市なら分かるけど、水上村ってどこ?」の声も。

記されていたのは、新潟県の妙高市と熊本県にある水上村の地名。SNSなどで「いったいどこなのか」と、全国的に話題になった。

改めて場所を確認してみると、九州のほぼ中央。熊本県南部の山間にある水上村。人口1933人、高齢化率45%の村。コンビニは1軒もない。奥球磨の、のどかな村と箱根の強豪校との間にあるつながりとは?
標高約1000メートルの村の地方創生
「知り合いからLINE来て、『水上村トレンド入っとるぞ』みたいなこと言われて、ちょっとびっくりしました」と、今回の反響に驚きと喜びが入り混じるのは水上村役場の那須裕平さん。

那須さんは「12年ぐらい前から、公認のロードレース大会をはじめまして、そういう陸上とかスポーツ関係で、地方創生やっていこうと」と話す。

水上村は2017年、標高約1000メートルの場所にクロスカントリーコースをオープンし、『スカイヴィレッジ』と名付けたこの施設を拠点にスポーツでの地方創生に力を入れている。

2023年に青学陸上部の原晋監督が代表理事を務める会社と包括連携協定を結び、監督自身も村の地方創生推進アドバイザーに就任するなど関係を深めてきた。

青山学院大学陸上部の原晋監督は「原とですね、水上村が『ふるさと創生』という形の提携をさせていただきましてですね。私も微力ながら水上村のお手伝いをしたいと、そんな思いがありました」と当時話していた。

そして2024年3月、青学の陸上部が初めて水上村で合宿を行い、その後、原監督からの提案で7月にロゴ契約を結ぶに至ったという。
うれしい悲鳴「めちゃくちゃピンチ」
水上村役場の那須さんは「すごい、ワクワクしましたね。やはりすごい知名度もありますし。選手たちの育成にちょっとですね、携われたっていうのもあって、それをどうにか水上村も一緒にPRできんかなって、本当にいいタイミングでこういうお話をいただいてですね。うまく優勝してもらって」と、青学の箱根駅伝連覇を喜んだ。

これまで村のホームページへのアクセス数は1日平均50件程度でしたが、箱根往路の1月2日だけで、約6000件と、なんと120倍に。PR効果抜群でしたが、うれしい悲鳴も。

水上村役場の那須裕平さんは「うち、ふるさと納税も同じ課でやってて、ふるさと納税の対応も今、電話がめっちゃ鳴ってて、うち職員今4人しかいないので、課がめちゃくちゃピンチです。職員も募集してますんで、よろしくお願いします」と話す。

ロゴの掲出契約は1250万円で、水上村は広告効果を9億円と試算していて、2025年度も継続予定している。
標高約1000メートルの高地に良質な温泉
青学が合宿した宿泊先は、2022年に原監督が購入し再出発した温泉旅館。支配人は、原監督から直々に依頼されたという箱根駅伝初優勝メンバーの一人、村井駿さん。水上村は最高の合宿地だと話します。

市房庵なるお村井駿支配人は「標高高いところでの練習、なかなかきついコースでございますので、そこの走り込みの部分ではすごい役立ってるなと。一番は温泉がすごい。もう私の旅館でも源泉かけ流しの温泉があるんですけども、やっぱり合宿において一番大切なのは疲労をどれだけ回復させるかっていう部分ですので」と話す。

村は今後、旧湯山小学校の周辺に400メートルのトラックを整備し、校舎を改修したアスリート支援施設の整備を計画している。

青山学院大学陸上競技部の原晋監督は「いま(水上)村の人口が約2000人だと思いますけど、定住人口を求めるだけではなくて、交流人口・関係人口を増やすことによって、この水上村の社会的地位をもっともっと上げていきたいと思います」と話した。

人口2000人あまりの小さな村で進む陸上競技のイノベーション。水上村と青学の取り組みが世界を驚かせる日が来るかもしれない。
(テレビ熊本)