2026年5月11日、石川県金沢市を拠点にプロ野球・日本海リーグへの参入を目指す「金沢ドラゴンクロス」が記者会見を開いた。球団が掲げるのは、選手が野球と地元企業での仕事を並行して続ける「デュアルキャリアモデル」だ。引退後に行き場を失う選手が後を絶たない現状を変えようという、オーナーの強い思いが球団設立の原点にある。
野球と仕事の「二刀流」で地域を変える――金沢ドラゴンクロス、日本海リーグ参入へ

会見に臨んだのは、金沢ドラゴンクロスの兼盛玉輝オーナーだ。金屏風を背にマイクを握った兼盛オーナーは、球団設立の思いについてこう語った。
「野球をやりながらキャリアを積んで、それからセカンドキャリアとして野球を辞めた後も企業で働ける、みんなが幸せになるような、そんな考えになりましてチームを作ろうと思いました。」
プロ野球選手として活躍できる期間は決して長くない。引退後に「セカンドキャリアの壁」に当たる選手が多いという現実が、この球団の設立を後押しした。競技の世界で花を咲かせながら、現役時代から社会に根を張る力も身につける――そのための仕組みを球団ごと設計したのが、金沢ドラゴンクロスの最大の特徴だ。
午前は練習、午後は企業へ――デュアルキャリアの一日

デュアルキャリアモデルの具体的な姿はこうだ。シーズン中、選手は試合のない日の午前中にチームの練習を行う。昼食と移動をはさみ、午後3時からは地元企業に出勤して通常の業務に就く。シーズンオフになると企業での勤務がメインとなり、野球選手としての時間よりも社会人としての時間が長くなる。


単に「選手が副業をする」のとは意味合いが異なる。球団の設計思想として、選手が競技者であると同時に地域社会の一員として働くことを前提に組み込んでいる点が、このモデルの核心だ。野球で培った規律やチームワーク、粘り強さは職場でも活きる。逆に社会人として働く経験が、選手としての視野や人間性を広げる。両者は相互に補い合う関係として位置づけられている。
少数精鋭で、一人ひとりの出場機会を最大化

チーム編成については、少数精鋭の方針を明確にしている。選手と監督の選考はこれからだが、人数を絞ることで一人あたりの出場機会を増やし、選手の成長につなげたい考えだ。

大所帯のチームでは出番が限られ、実戦経験を積めないまま選手生活を終える者も少なくない。少数精鋭で戦うことは、デュアルキャリアの実現可能性という観点でも理にかなっている。企業と連携して受け入れポストを確保するには、選手数が多すぎると調整が難しくなるからだ。規模を意図的にコンパクトに保つことで、野球と仕事の両立という理念を実態として機能させようとしている。
ホームは金沢市民球場、石川県内を幅広くカバー
ホーム球場については、石川ミリオンスターズのホームでもある金沢市民野球場を使用したい意向だ。また、小松市や七尾市の球場も使用する予定で、石川県内の複数の地域にわたって試合を届ける計画になっている。

金沢だけでなく、小松や七尾といった地域でも試合が行われることは、2024年の能登半島地震で大きな被害を受けた石川県全体にとっても、スポーツが地域をつなぐ役割を果たす機会となりうる。
ミリオンスターズとの関係――「ライバルでもあり仲間でもある」

同じ金沢市を拠点とする石川ミリオンスターズとの関係について問われた兼盛オーナーは、こう言い切った。
「一番は勝ち負けよりも、金沢が、石川がこれによって大きく羽ばたきたい。ライバルでもあり仲間でもあると思っています。」

同じ金沢市を本拠とする2球団が存在することは、競争である以上にパイを広げる力になりうる。ファン層の拡大、スポンサー企業の増加、地域全体のプロ野球熱の高まり――どれも単独のチームでは成し得ない効果だ。金沢ドラゴンクロスの参入は、石川のスポーツ文化そのものを底上げする可能性を秘めている。
来シーズンは5球団体制へ――日本海リーグが拡大

金沢ドラゴンクロスは来シーズンからの参入を目指している。日本海リーグでは金沢ドラゴンクロスのほか、新たに岐阜の球団も設立準備が進んでおり、来シーズンは合わせて5球団での熱戦が繰り広げられる見込みだ。

リーグの拡大は、各地域にとっても歓迎すべき動きだ。試合数が増え、観客が集まり、選手が地元企業と結びついていく。金沢ドラゴンクロスのデュアルキャリアモデルが機能すれば、他のリーグや球団への波及効果も期待できる。

「野球をやりながらキャリアを積む」という考え方は、プロスポーツの世界ではまだ珍しい。しかし引退後の選手たちが直面するセカンドキャリアの問題は、野球界全体が長年抱えてきた課題でもある。金沢ドラゴンクロスの挑戦が、その解決策の一つとして現実のものとなるか。石川の地から目が離せない。
(石川テレビ)
