北朝鮮で2024年12月、新たな内部映像が撮影され、北朝鮮の劣悪な環境が明らかになった。
国境封鎖にともなう物流停滞で飢餓や物価高が深刻化し、核・ミサイル開発を優先する当局への不満が幅広い世代で急拡大している。
死傷者4000人超…海外派兵で外貨稼ぎか
ロシア軍の戦闘に加わる北朝鮮兵の死傷者は、すでに4000人にのぼるとみられている。

海外派兵が外貨稼ぎの1つとも指摘される中、北朝鮮内部では貧困がさらに拡大している。
新たな内部映像と脱北者の新証言から、北朝鮮の実態が明らかになってきた。
2024年12月に撮影されたという、北朝鮮内部の映像に映っていたのは野外市場だ。
舗装されていない土の上に座り込んだ人たちが、衣類や野菜を売っている。
売られているダイコンやジャガイモとみられる野菜は、いずれもやせていて小さいように見える。

この映像を入手し公開したのは、韓国・東亜大学の姜東完教授だ。
姜教授は、今の北朝鮮の経済は「非常に劣悪」だと指摘する。
東亜大学・姜東完教授:
市場で取引できる食料や生活必需品が絶対的に不足している。
厳しい監視の中で撮影されたという映像で、姜教授が特に注目したのは、最後に収められていた路上で食事をとる男性の姿だ。
北朝鮮では、餓死する人が相次いだ1990年代に路上で生活する子ども「コッチェビ」が多く見られたが、姜教授はこの男性が、大人のコッチェビだと指摘する。

東亜大学・姜東完教授:
大人が市場の路地の片隅で食事をしているのだから、北朝鮮経済の今の状況が、非常に貧しく厳しいことを示している。
北朝鮮の経済状況について、韓国の情報機関は2023年、「北朝鮮でコメ約80万トンが不足している」とし、餓死した人が例年の3倍に急増したと報告している。

さらに、北朝鮮の最近の内情を知る脱北者の女性が、FNNの取材に応じた。
2023年に脱北したカン・ギュリさん:
米を食べることができるのは、中間層の生活水準の人たち。それより下の人たちはトウモロコシを食べていました。
脱北したカン・ギュリさんは2023年10月、木造の船に乗って北朝鮮から脱出したばかりだ。
新型コロナの発生によって、中国との国境が封鎖され物流が途絶え、物の値段が10倍以上になったという。
2023年に脱北したカン・ギュリさん:
「自分たちで針1本も作れない国がどこにあるのか」と、北朝鮮の人々は、とても悔しがっていました。
「核はなぜ必要なんだろう?」
貧困にあえぐ住民たちをよそに、大金を投じて北朝鮮は核やミサイルの開発を進めている。

1月6日には、極超音速中長距離弾道ミサイルの発射実験に成功したと発表したほか、2024年10月には、最新型のICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星19型」の試験発射を行った。
そして2025年、7回目の核実験に踏み切る可能性が指摘されている。
住民の暮らしをないがしろにする当局に対して、若い世代だけでなく、年配の人たちの間でも不満は高まっているという。

2023年に脱北したカン・ギュリさん:
核をあんなに開発したのに、それ以外には何をしたの、いったい?核はなぜ必要なんだろう?私たちのために必要なのか?違うと思う。政権維持のために必要なものじゃないですか。
不足する外貨を獲得する目的もあり、北朝鮮は2024年10月に“蜜月”とされるロシアに兵士約1万人を派兵した。
これにより、北朝鮮はロシアから年間2億ドルほどを受け取ると、韓国の情報機関は試算している。
一方で、派兵された北朝鮮兵の死傷者は、すでに4000人にのぼるとされている。

2023年に脱北したカン・ギュリさん:
とても悔しくて心が痛いです。北朝鮮にいる若い青年たちを“銃弾受け”で送り出し、それに対するお金をもらって商売している。
アメリカでトランプ新政権が誕生する中、北朝鮮の金正恩総書記は存在感を高めたいとみられている。
しかし、その足元は大きく揺らいでいる。
(「イット!」1月14日放送より)