2025年の鹿児島は、観光の目玉になる大型イベントが少ないといわれる。しかし今春、世界文化遺産エリア・鹿児島市磯地区に、県内では15年ぶりとなるJR新駅が開業することが決まり、観光の起爆剤になればと関係者の期待が高まっている。
「本来持つポテンシャルの発揮を」観光関係者が掲げる2025年の戦略
県内の観光関係者が集う恒例の新年会が鹿児島市で開かれ、宿泊や交通、旅行業などから約450人が参加した。

観光の目玉に乏しいとされる2025年の鹿児島だが、関係者は観光戦略をどのように描いているのだろうか。大手旅行会社・阪急交通社の永迫昌代鹿児島支店長は、「(観光の目玉不在は)逆に言うと1年中来てもらえる環境があるという捉え方もできるので、全国から鹿児島に来てもらえる取り組みを強化する」と語る。

鹿児島初の外資系高級ホテル・シェラトン鹿児島の伊牟田均社長はポイントに「大阪・関西万博」を挙げる。「その流れ(インバウンド客)をどう鹿児島に持ってくるか、鹿児島の力が試される」とした。
2人の発言からは、鹿児島が本来持つ観光のポテンシャルを発揮すれば十分乗り切れるという自負が感じられた。

一方で、観光の起爆剤として期待されているトピックスもある。それが3月15日、鹿児島市吉野町(磯地区)にJRの新しい駅として開業する「仙巌園駅」だ。
新駅設置は、地元町内会や経済団体が長年にわたって要望してきたもので、鹿児島市が事務局となり、調査・検討などの設置作業が行われてきた。建設費用約4億円は、民間と県、鹿児島市で負担、実現する新駅開業は、2010年の「神村学園前駅」以来、鹿児島では実に15年ぶりとなる。
鹿児島に15年ぶり誕生のJR新駅「仙巌園駅」 命名への思い
仙巌園駅は、JR日豊本線の鹿児島駅と竜ヶ水駅の間に位置する。

国道10号をはさむ目の前にあるのが「仙巌園」だ。万治元年(1658)に島津家19代光久によって築かれた島津家の別邸で、雄大な桜島を築山、錦江湾を池に見立てたスケールの大きな庭園として有名だ。
仙巌園が位置する磯エリア一帯は、平成27年(2015年)に「明治日本の産業革命遺産」の一つとして世界文化遺産に登録された。大河ドラマ「西郷どん」のロケも行われるなど鹿児島を代表する観光名所となっている。

駅の設置協議会が新駅の名称を公募したところ、1000件以上が寄せられ、最終的にJR九州が「仙巌園駅」に決定した。駅の目の前にある仙巌園を訪れる観光客にも分かりやすく、地元の人たちにも末永く親しんでもらいたいとの思いが込められている。
周辺観光への効果に期待 新駅誕生を新しい歴史刻む大きなイベントに
仙巌園駅は無人駅だが、1日200人から300人の利用客が見込まれている。3月15日の開業日には、記念式典や仙巌園でのイベントが予定されているほか、今後は、地域住民の利便性や観光ルート造成のため、近くの磯海水浴場までの歩道整備も段階的に進められることから、周辺観光への効果が期待されている。

冒頭の新年会で、駅名にもなった仙巌園を運営する島津興業・長野信弘常勤顧問は、「10年以上前からプロジェクトを進めていて、いよいよ実現するので、大きな新しい歴史を刻むようなイベントになる。鹿児島の観光の起爆剤になって経済効果が広く波及していけば」と意気込みを語った。
鹿児島が持つ観光資源と、おもてなしの心で、しっかりと地に足のついた観光戦略を描きたい。関係者の思いは、鹿児島を訪れる観光客にきっと届くことだろう。
(鹿児島テレビ)