2025年3月15日、JR仙巌園駅が開業した。県内ではいちき串木野市の「神村学園前駅」以来15年ぶりの新駅だ。鹿児島市に誕生した新たなランドマークが、地域にどのような変化をもたらすのか。開業初日の様子から、その期待と展望を探る。
雨でも人であふれる駅舎
3月15日、鹿児島市吉野町に仙巌園駅が開業した。JR日豊本線の鹿児島駅と竜ヶ水駅の間に位置するこの新駅は、桜島を望む錦江湾沿いの絶景ロケーションが魅力だ。

開業初日は曇り空で、時折雨が降る天候だったが、駅は多くの人でにぎわった。ホームに続く階段にまで長い列ができ、列車が到着すると朝の通勤ラッシュのような光景が広がった。

「雨が降っていなければ」「桜島が見えなかった。もう少し晴れていたらどっしりと見えたのに」。天候を惜しむ声も聞かれたが、多くの人が駅や列車をカメラに収めていた。

15年ぶりの新駅誕生
仙巌園駅は、いちき串木野市の「神村学園前駅」以来、県内で15年ぶりの新駅となる。駅舎のコンセプトは「歴史と、自然と、人と、優しくつながる駅」。無人駅ながら、隣接する国道10号の渋滞対策として、踏切の遮断時間を短くするため、午前7時から午前9時までは下りの列車4本を通過列車とするなど、地域の課題にも配慮した設計となっている。

駅開業に当初から携わってきた鹿児島市役所の職員は、「やっとできたなって感じ。きょうの雨のように涙が出てくるような気持ち」と喜びを語った。一方で、「渋滞がどうなるか心配もあって反対の人もいたし、費用をどうするか?とか大変だった。完成できて本当によかった」と、開業までの道のりの苦労も明かした。

全国から集まる鉄道ファン
新駅の開業は、鉄道ファンにとっても大きな出来事だ。歴史的な日にどうしても駅を訪れたいと神奈川県横浜市から訪れた女性は、「びっくりするくらい電車が混んでいた。新駅ができる場面に人生で初めて出くわしたから、わくわくしました」と興奮気味に語った。
限定300セットの開業記念乗車券を手に入れた女性は、「うれしかった。寒い中、並んだかいがあった」と笑顔を見せた。

地域経済への期待
新駅の開業は、観光客の増加など周辺地域の経済にも影響を与えそうだ。磯海水浴場近くの磯ビーチハウスには、駅の開業日に合わせてカフェがオープンした。ドイツから輸入した焙煎機で入れるこだわりのコーヒーを、オーシャンビューの絶景とともに楽しめる。利用客からは、「すごいおいしかった。前は神戸に住んでいて。神戸は喫茶店の激戦区だけど、神戸に比べてもおいしい」とコーヒーの味を評価する声が聞かれた。

カフェを運営するグッドフェローズダイニングの西勇二社長は、「一度来て次来ないではなく、次来る理由もしっかり僕たちが何かつけることができればと思い、今回カフェをオープンした。そこにしっかり寄与できれば」と意気込みを語った。
JR九州は1日あたり200から300人の乗客を見込んでおり、県内への経済波及効果は57億円と試算している。磯新駅設置協議会の藤安秀一会長は、「県全体の人たちが『できてよかったね』と思えるような駅づくりができれば」と期待を寄せた。
新たな観光の拠点に
仙巌園駅は、旧集成館などの世界文化遺産のエリアに位置しており、観光客の増加が期待されている。鹿児島中央駅からの所要時間は約10分で、アクセスの良さも魅力だ。

JR九州の福永嘉之専務執行役員は、「地域の皆様に愛される駅に育てることが我らの責務。皆様と一緒に力を合わせて取り組みたい」と決意を述べた。
地域住民や飲食店など多くの人の期待を乗せて開業したJR仙巌園駅。この新しいランドマークが、鹿児島の観光と地域経済にどのような変化をもたらすのか。その展開が楽しみな船出となった。
(鹿児島テレビ)