現地には来れないが…オンラインで震災学習

長洞元気村・村上誠二事務局長:
わたしたちは、津波を見ていながら本当に何もすることができない。大自然の中の人の力は小さいんだなと思い知らされる、そんな津波だった。

東日本大震災の記憶を語りかけるのは、パソコンの画面。
8月に、岩手・陸前高田市で行われた中学生向けの震災学習の様子。
画面の先にいるのは、京都府の同志社中学校の生徒たち。

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この中学校では希望者を募り、毎年8月に陸前高田市を訪れてきたが、2020年は新型コロナウイルスの影響で現地に来ることができない。
続いてきた交流の灯を絶やさないために、オンラインによる学習の場が設けられた。

地元で活動する人たちが先生役となって講演。
直接顔を合わせることはできないが、被災地の思いを伝える。

同志社中学校の生徒:
ものすごくつらかったと思うけれど、みんなで、より良くしていこうと前向きでいられたのは何でですか

長洞元気村・村上誠二事務局長:
集落の方々含めて全国の人から支えられて、自分たちが生き延びることができたという共有の思いがある。災害によって絆が強く強くなっていった

このオンラインでの震災学習に取り組んでいるのが、一般社団法人マルゴト陸前高田。
この団体では、市からの委託を受け、民泊のコーディネートを行ってきた。

本来、学生の夏休みと重なるこの時期は、全国から多くの人たちが訪れるが、2020年は例年とは全く違う夏。

マルゴト陸前高田・古谷恵一理事:
年間だと、修学旅行生だけで1,500人くらい来てくれる。大学生や企業、外国の人も来てくれるけれど、すべてなしになった

新型コロナウイルスにより、民泊の受け入れは中止に。団体自体が、一時は休業せざるを得なかった。

画面越しに現地体験「バーチャルフィールドワーク」

8月26日、マルゴト陸前高田はオンラインでのさらに新しい取り組みに挑戦した。

実際に現地を歩く様子を、画面越しに体験してもらう「バーチャルフィールドワーク」。
この取り組みには、東京の清泉女子大学の学生たちが参加した。

スタートは津波伝承館から、解説員がガイド。
展示の内容は、カメラで撮影し配信される。

津波伝承館 解説員・熊谷葉月さん:
本当は、真っすぐにかかった橋だったけれども、津波の力によって大きく折れ曲がってしまった

津波伝承館でも、こうしたライブ配信は初めての試み。実際に、相手が目の前にいないゆえの戸惑いもあった。

津波伝承館 解説員・熊谷葉月さん:
全然違う。お客さんの反応があるとないとで

それでも、いつ災害が起こるかわからないからこそ、震災の経験を伝える。

津波伝承館 解説員・熊谷葉月さん:
奥の方に行くと陸前高田市の街がある。(津波が)進んでいくのを想像してもらえると怖いと思う

津波伝承館 解説員・熊谷葉月さん:
もし、次の災害に向けて自分の命を守るきっかけづくりになったら良いと思っている

続いては外へ。この日はよく晴れて広田湾の景色が一望できた。
年を重ねるごとに変わりゆく、復興の今を紹介する。

配信の様子:
今、この場所に新しく松原を再生するために、苗を一から植えている。ことしに関してはコロナの影響で植樹がうまく進まなくて、来年まで植える作業を続ける

そして、街の人たちとの交流も。復興した商店街の店舗を訪れた。

偶然居合わせた震災ガイドの語り部との出会いもあった。

陸前高田観光ガイド・河野正義さん:
コロナいつ終わるかわかりませんけれど、ぜひぜひ来てください。一生懸命、ご案内するので

街の人たちの温かさに触れる機会。

鶴亀鮨 店主・阿部和明さん:
日本中、世界中で何でもつながるので、これがまだまだ増えていっぱいあれば良い

今回のバーチャルフィールドワークで、大学生たちは陸前高田をどう感じたのだろうか。

清泉女子大学の学生:
ビデオで現地の状態を映してもらうことで、今の状態、ネットではわからない陸前高田市を知ることができたと思う

清泉女子大学の学生:
今度 訪れた時はどうなってしまうのだろうというくらい人の温かさを感じて、訪れることが増して楽しみになった

「つながり続けていくことが大事」 

新型コロナウイルスの影響がいつまで続くのか、先の見通しは立たない。
しかし、インターネットだからこそ、物理的な距離の制約はない。

マルゴト陸前高田・古谷恵一理事:
少なくとも、オンラインであってもつながり続けていくことが大事だと思う。本来、来る予定もなかった人としっかりつないだり、外国の人だったり、そういう人たちともつないでやってみたい

収束後に、再び多くの人に訪れてもらい、震災のことを知ってもらう。
その日のために、活動を続ける。

(岩手めんこいテレビ)

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