警察を攻撃する動機
この間特捜本部は、1月13日発売の週刊ポストに掲載された松本サリン事件と教団の関係についての記事を読んで危機感を覚えた教祖・麻原が、教団幹部に「警視総監の首根っこを振り回して来いと言ったらどうするか」と発言したとの情報を掴んでいた。

この記事は国松長官の写真を掲載。オウムを「A団体」と表現し、長官自ら「A団体」への捜査を指揮していると書かれていた。
麻原の発言が本当にあったのか捜査員は裏付け捜査を行い、その発言が実際に録音されていることを突き止め、その音源を入手することもできた。
教団が警察に攻撃をしかける動機があることが裏付けられたことから、栢木はそれを盛り込み、令状請求のための総合捜査報告を書いていく。
連日にわたって東京地検と協議を重ねていたが、地検は逮捕前から「逮捕状の請求は可能であるが起訴までは難しい」との立場を変えなかった。

「金子の声とテレビ朝日にかかってきた電話の音声の声紋鑑定の結果は十分だと判断しているが、金子の自供がないと起訴することは難しい。金子がどうしてこうした電話をしたのか、その犯行意図を証明する必要がある。ただの悪戯電話では取るに足らない話になってしまう。
国松長官銃撃事件がオウム真理教の犯行であるという事件の全体像を立証していけるかどうか、そのベースが確かなものになっていないと金子を起訴することはできない」
担当検事から出された厳しい意見。
何としても金子から自供を得たい。特捜本部は金子の逮捕で一勝負に出たのである。